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2021.07.11 (Sun)

真夏の夜の夢 4

高坂紬(こうさかつむぎ)は一目見て、
その部屋が気に入ってしまった。
南向きの角部屋、ベランダも広く解放感がある。
おまけに都心のワンルームマンションなのに
7万円という賃貸料も魅力的だった。

「どうですか?お気に入りましたか?」
ドアを解放させて廊下から顔だけを覗かせて仲介業者が
バリトンの涼しげな声で問いかける。
倫理的に部屋で男女二人っきりになるのは
ご法度なのはわかるけど、
なんだか勝手に部屋を見なさいと言われているようで
釈然としなかったが、
そんな気持ちを打ち消すほどに紬はその部屋が気に入った。
「前の借り主はどんな方でしたか?」
そう尋ねると、待ってましたとばかりに
「大家さんの姪ごさんが使っておられました
それに他の部屋もほとんどの住人は女性ですので安心ですよ」
何から何までパーフェクトだった。
紬は即決に近い形でその部屋を契約した。

「へえ~、綺麗な部屋じゃん」
まだ引っ越しの荷物が片付いていない部屋を
彼氏の悟がキッチンの換気扇の下でタバコをふかしながらそう言った。
「あんまりタバコを吸わないでよね
壁紙が黄ばんじゃうから」
「わかった、わかった。
それよりかさちょっと休憩しようぜ」
ろくに片付けを手伝いもしないで悟はベッドに腰かけて
隣に座りなよという意味をこめてベッドをポンポンと叩いた。
「もう!全然片付かないじゃないの」
口調は怒ってはいるが紬は悟に甘えたくて彼氏の隣に密着して腰かけた。
「この部屋があれば、いつでもエッチできるな」
悟が紬の肩を抱いてキスをせがんだ。
「ダメよ~、まだカーテンを吊ってないんだから外から丸見えだわ」
「お前の体は綺麗なんだからたっぷり見せてやればいいじゃん」
そう言いながらスカートをめくりあげて
ショーツを脱がすと股間に顔を埋めてきた。
「いやよ、シャワーもしてないんだから」
「だからいいんじゃないか
お前そのものの匂いが俺は好きなのさ」
そう言って舐め始めましたが
じっくりと責める事もせず、
アソコを唾液で濡らすことだけが目的だったようで
そそくさとデニムとトランクスを脱ぎ捨てると
悟は紬に挿入してきた。

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彼が腰を打ち付ける度に、ぎしっぎしっとベッドが軋む。
軟かめのスプリングソファを選んだのは間違いだったかしら…
そんな事を考えているといくら悟が頑張ってくれても
なかなか逝けそうにもなかった。
そして紬の耳はベッドの軋み音とは別の音に気づき始めた。
ぎしっぎしっ、ギギっ!
ぎしっぎしっ、ギギギっ!
「ねっ悟、変な音がしない?」
「なんだよ!シラケた事を言うなよ
俺、もうすぐ逝きそうなんだ!」
そう言った次の瞬間には、
逝くぞと宣言してペニスを抜くと紬の腹の上に射精する体制をとった。
そして、いざ射精するというタイミングに合わせるかのように
クローゼットの扉が勢いよくバーンと開いたのだ。
「うおっ!ビックリしたあ!」
驚いた悟はピュッと少しだけ射精して後は止まってしまったようです。
「なんで開いたのかしら?」
扉を閉めようとクローゼットに近づいた紬は床に一本のロープが転がっているのに気づいた。
「このロープなにかしら?」
見たこともないロープだったので少しだけ不気味でした。
「紬のものじゃないんだね?」
そう言って悟はロープを拾い上げ、
もしかしたら引っ越し業者の忘れ物かもしれないなと
ロープを丸めてゴミ箱に投げ捨てた。

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紬の身の回りに不可思議な現象がおきはじめたのは
それからまもなくの事でした。
ある日、買い物をしようと原付バイクで走っているとパトカーに止められてしまいました。
「ダメですよ!原付で2人乗りなんかしちゃ」
紬に免許証の提示を求めながら警官が叱りつけました。
「私は…一人ですけど?」
おかしな事を言う警官だなと思いながら紬はそう言った。
「何を言ってるんだね、現にこうして二人で…」
免許証を見ていた警官が顔をあげて
「あれっ?おかしいなあ?
後ろに座っていた男の人はどこへ行った?」と
怪訝そうな顔をしました。

また別の日に女友達と遊園地に行って写メをたくさん撮ったのですが、後で確認するとすべての写メに紬の横に白いモヤがかかっていました。
『なにこれ?…』
よくよく見てみると、
なんだかそれは人の形のようにも見えました。

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「ねっ?気持ち悪いでしょ?」
彼氏の悟にLINEで白いモヤが写ってしまっている画像を送信したら、すぐさま悟から電話がかかってきたので紬はそう言った。
『ほんとだ…すっげえ気持ち悪いな』
ベッドに寝転びながら「カメラの故障かしら?」なんて話していると、またいつかのように、ギギっ…ギギギっ…!!と変な音がし始めた。
紬は悟と通話していることも忘れて、
その奇妙な音に釘付けになった。
やがてバーン!とクローゼットが開いて、
捨てたはずのロープがクローゼットから飛び出してきた。
ロープは意志があるように蛇のようにくねりながら
スルスルと紬の首に巻き付いてきた。
『紬?おい、どうした紬?』
通話が繋がったままのスマホから心配そうな悟の声がした。
次の瞬間、スマホは何かに弾かれたように飛んで
壁に激しく叩きつけられた。
「く、苦しい!」

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紬は必死に首に巻き付いたロープを解こうとしたが
じわりじわりときつくなってゆく。
そして誰かの手が紬の足を撫でた。
その手は人の温もりなどなく、
まるで氷で撫で上げられているような冷たさだった。
次の瞬間、紬は身の毛もよだつほどの恐ろしい声を耳にした。
『あんな奴より俺の方がよほど上手だよ』
スルスルとショーツが勝手に脱がされてゆく。
自分の意思ではなく脚が勝手に開き
とても冷たい氷柱(つらら)のようなペニスがおまんこに突き刺さってきた。
『気持ちいいだろ?』
低い男の声が部屋全体をビリビリと震わせるように響き渡った。
『お前を気に入ったから連れていってあげるよ』
ロープがさらに首を締め付けてきて意識が薄れてゆく。
もうダメだと思った瞬間、
ドアが解錠されて悟が飛び込んできた。
「紬!!」
悟が叫ぶと首に巻き付いていたロープが弛み
冷たいベールに包まれた体が自由になった。

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結局、紬はあの部屋を引き払った。
悟が「あの部屋は事故物件なんだろ?」と仲介業者に詰め寄ったところ、申し訳ございませんでした、
実はあの部屋は男がクローゼットで
首を吊った部屋なのだと白状してくれました。
「事故物件は告知する義務がありますよね?」
告訴も辞さないと申し出ると
「事故後、一旦誰かが入居すると申告義務が消滅するんです」と教えてくれた。

その後、紬は一人で寝るのが怖くなり、
悟と同棲することにしました。
あの部屋を出てからは怖い現象もなくなったそうです。




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