2016.03.18 (Fri)
黒い瞳 15
~淳子19歳~
「淳子、もうすぐだな」
そういって若林は大きく膨れた淳子のお腹をさすった。
「あなた、まだ予定日まではあと10日もあるのよ。」
「10日なんて、あっと言う間じゃないか。
そうだ!俺が非番の日に帝王切開してだしちゃえ。なら、あと3日だ」
「いやだ、なに言ってるのよ。私たちの初めての子よ、ちゃんと産むわ」
「ああもう、早く生まれてくれよ。俺の息子」
「娘かもしれないわよ」
二人で相談して、生まれてくる子の性別は、
産婦人科の先生に聞かないことにしていた。
『でも、この子は女の子・・・』
淳子には確信があった。
エコーで見たわが子の影には
男のシンボルがなかったような気がしていたからだ。
『この子は女の子・・・かわいい、かわいい私たちの娘・・・』
しかし、若林は男の子だと信じて疑わなかった。
ベビー服も、おもちゃも、男の子用を用意していた。
『ふふふ・・おバカなパパさんですこと』
「なあなあ、名前・・・
俺たちの一文字を取って「淳太」ってやっぱり変かなあ?」
「いいわよ。男の子ならね。でも、女の子なら私が決めるわよ」
「ああいいさ。絶対に男に決まってるさ。なあ、淳太」
そう言ってまたお腹をさすった。
「おっ!今、蹴ったよな?」
「そうね。私は女よバカなパパさんって言ったのよ。うふふ」
淳子は、女の子なら母、由江から一文字もらい
由紀子にしようと決めていた。
それは、梅雨の中休みと言うべきか、
昨夜からのシトシトと降っていった雨があがり
久しぶりの太陽が顔をのぞかせていた。
しかし、梅雨時期独特の湿った空気が体にまとわりつき、
じっとりと汗ばむ昼下がりであった。
さて、夕飯の買い物にでかけるか。
テレビは朝から人質立てこもりのニュースでもちきりだった。
『健太が朝早くから呼び出されたのは、この事件ね』
だとしたら、解決するまで健太は帰って来ないかもしれない。
夕飯の支度、難しいなあ。
淳子の分だけでいいのか、
それとも早く解決した場合は二人分必要だし・・・
迷っているうちにお腹に痛みを感じた。
![images (26)](http://blog-imgs-85.2nt.com/h/a/w/hawks5810/201603182103147bes.jpg)
『イタタ・・あれっ?これって・・陣痛?』
いざというときの為に、入院出産の準備は整えてある。
「初産だし、不安・・・やっぱりお義母さまに来ていただこう」
電話をすると、
嬉しそうに「そう。ようやくきたのね。
大丈夫。すぐいってあげるわ」そういってくれた。
義母が到着するころには陣痛が規則ただしく襲うようになっていた。
「まあ大変。さあいそぎましょう」
タクシーで病院へ行くと、すぐさま分娩室に入った。
一方、健太達警察と人質立てこもり犯との睨み合いは続いていた。
「課長!俺が先陣を切ります!」
立てこもり12時間・・・
犯人は苛立ち、人質の女性も体力的にきつくなりつつあった。
犯人の要求どおり食事を用意させた。
その出前もちに変装し突入を試みることとなった。
その大役を若林が買って出たのだ。
「奴は拳銃を所持している。防弾チョッキを着用すること!
そして、くれぐれも無理はするな。いいか!」
指揮をとる管理官の目も緊張と疲労からか真っ赤に充血していた。
「はいっ!」
健太は同僚から防弾チョッキを受け取ると
慎重に装着した。
「はい、ひーひーふー。がんばって。ひーひーふー」
ベテラン助産婦さんののんびりした声が分娩室に響いた。
『なにがひーひーふーよっ!こんなに痛いなんて思ってもみなかったわ!』
看護婦たちの事務的な台詞。
力をいれてもなかなか我が子はでてくれそうにもない。
額から大粒の汗が流れる。
『まったく冗談じゃないわ。この子、健太に似てしぶといんだから』
「はい、ひーひーふー。もう少しよ、そうそう頭がでてきたわ」
『うわあーっ!なんっていう痛さよ!は・や・く、でなさい!このっバカ娘!!』
![140911_2.jpg](http://blog-imgs-85.2nt.com/h/a/w/hawks5810/140911_2.jpg)
若林はビルの陰にバックアップの捜査員の姿を確かめ
アイコンタクトを取ると、おかもちを手に提げハイツの中に入った。
犯人と接触し、注意を逸らさせているうちに
裏の窓からSATが侵入する作戦なのだ。
ドアの前に立ち、中の様子を伺った。
室内からは物音ひとつしない。
ドアホンを鳴らす。
「誰だ!」
苛立ちの声を荒らげて犯人が応答した。
「まいど~。食事をお持ちしました~。」
犯人を刺激しないように、間の抜けた声を発した。
「警察だろうが!」
「とんでもないですよ。
ほんとに食事を持ってきた近所のレストランの店員ですう~」
「カギを開けてやるから、ドアを大きく開けて姿をみせろ」
カチャというカギが外れる音・・・
若林はドアを大きく開けた。
犯人が人質のこめかみに銃口を当てている。
「なんか物騒っすねえ」そう言いながら一歩踏み出した。
「動くな!メシをそこへ置いてとっとと帰りやがれ!」
『ダメだ・・・中へ入れない・・・』
言われるまま、おかもちを玄関内へ置き
立ち去ろうとしたそのとき・・・
パリン!ガラスの割れる音がした。
「くそっ!サツか?」
男が後ろを振り返り、女を自由にした。
『今だ!』
若林は中へ踏み込み、
人質の女の手を取り外へ連れ出そうとした。
「野郎!!」
若林の動きに気づいた犯人が振り返り、
犯人の銃口が若林を捉えた。
![n-TERRORIST-large570.jpg](http://blog-imgs-85.2nt.com/h/a/w/hawks5810/n-TERRORIST-large570s.jpg)
パンッ!!
乾いた音とともに若林の側頭部に衝撃が走った。
「淳子、もうすぐだな」
そういって若林は大きく膨れた淳子のお腹をさすった。
「あなた、まだ予定日まではあと10日もあるのよ。」
「10日なんて、あっと言う間じゃないか。
そうだ!俺が非番の日に帝王切開してだしちゃえ。なら、あと3日だ」
「いやだ、なに言ってるのよ。私たちの初めての子よ、ちゃんと産むわ」
「ああもう、早く生まれてくれよ。俺の息子」
「娘かもしれないわよ」
二人で相談して、生まれてくる子の性別は、
産婦人科の先生に聞かないことにしていた。
『でも、この子は女の子・・・』
淳子には確信があった。
エコーで見たわが子の影には
男のシンボルがなかったような気がしていたからだ。
『この子は女の子・・・かわいい、かわいい私たちの娘・・・』
しかし、若林は男の子だと信じて疑わなかった。
ベビー服も、おもちゃも、男の子用を用意していた。
『ふふふ・・おバカなパパさんですこと』
「なあなあ、名前・・・
俺たちの一文字を取って「淳太」ってやっぱり変かなあ?」
「いいわよ。男の子ならね。でも、女の子なら私が決めるわよ」
「ああいいさ。絶対に男に決まってるさ。なあ、淳太」
そう言ってまたお腹をさすった。
「おっ!今、蹴ったよな?」
「そうね。私は女よバカなパパさんって言ったのよ。うふふ」
淳子は、女の子なら母、由江から一文字もらい
由紀子にしようと決めていた。
それは、梅雨の中休みと言うべきか、
昨夜からのシトシトと降っていった雨があがり
久しぶりの太陽が顔をのぞかせていた。
しかし、梅雨時期独特の湿った空気が体にまとわりつき、
じっとりと汗ばむ昼下がりであった。
さて、夕飯の買い物にでかけるか。
テレビは朝から人質立てこもりのニュースでもちきりだった。
『健太が朝早くから呼び出されたのは、この事件ね』
だとしたら、解決するまで健太は帰って来ないかもしれない。
夕飯の支度、難しいなあ。
淳子の分だけでいいのか、
それとも早く解決した場合は二人分必要だし・・・
迷っているうちにお腹に痛みを感じた。
![images (26)](http://blog-imgs-85.2nt.com/h/a/w/hawks5810/201603182103147bes.jpg)
『イタタ・・あれっ?これって・・陣痛?』
いざというときの為に、入院出産の準備は整えてある。
「初産だし、不安・・・やっぱりお義母さまに来ていただこう」
電話をすると、
嬉しそうに「そう。ようやくきたのね。
大丈夫。すぐいってあげるわ」そういってくれた。
義母が到着するころには陣痛が規則ただしく襲うようになっていた。
「まあ大変。さあいそぎましょう」
タクシーで病院へ行くと、すぐさま分娩室に入った。
一方、健太達警察と人質立てこもり犯との睨み合いは続いていた。
「課長!俺が先陣を切ります!」
立てこもり12時間・・・
犯人は苛立ち、人質の女性も体力的にきつくなりつつあった。
犯人の要求どおり食事を用意させた。
その出前もちに変装し突入を試みることとなった。
その大役を若林が買って出たのだ。
「奴は拳銃を所持している。防弾チョッキを着用すること!
そして、くれぐれも無理はするな。いいか!」
指揮をとる管理官の目も緊張と疲労からか真っ赤に充血していた。
「はいっ!」
健太は同僚から防弾チョッキを受け取ると
慎重に装着した。
「はい、ひーひーふー。がんばって。ひーひーふー」
ベテラン助産婦さんののんびりした声が分娩室に響いた。
『なにがひーひーふーよっ!こんなに痛いなんて思ってもみなかったわ!』
看護婦たちの事務的な台詞。
力をいれてもなかなか我が子はでてくれそうにもない。
額から大粒の汗が流れる。
『まったく冗談じゃないわ。この子、健太に似てしぶといんだから』
「はい、ひーひーふー。もう少しよ、そうそう頭がでてきたわ」
『うわあーっ!なんっていう痛さよ!は・や・く、でなさい!このっバカ娘!!』
![140911_2.jpg](http://blog-imgs-85.2nt.com/h/a/w/hawks5810/140911_2.jpg)
若林はビルの陰にバックアップの捜査員の姿を確かめ
アイコンタクトを取ると、おかもちを手に提げハイツの中に入った。
犯人と接触し、注意を逸らさせているうちに
裏の窓からSATが侵入する作戦なのだ。
ドアの前に立ち、中の様子を伺った。
室内からは物音ひとつしない。
ドアホンを鳴らす。
「誰だ!」
苛立ちの声を荒らげて犯人が応答した。
「まいど~。食事をお持ちしました~。」
犯人を刺激しないように、間の抜けた声を発した。
「警察だろうが!」
「とんでもないですよ。
ほんとに食事を持ってきた近所のレストランの店員ですう~」
「カギを開けてやるから、ドアを大きく開けて姿をみせろ」
カチャというカギが外れる音・・・
若林はドアを大きく開けた。
犯人が人質のこめかみに銃口を当てている。
「なんか物騒っすねえ」そう言いながら一歩踏み出した。
「動くな!メシをそこへ置いてとっとと帰りやがれ!」
『ダメだ・・・中へ入れない・・・』
言われるまま、おかもちを玄関内へ置き
立ち去ろうとしたそのとき・・・
パリン!ガラスの割れる音がした。
「くそっ!サツか?」
男が後ろを振り返り、女を自由にした。
『今だ!』
若林は中へ踏み込み、
人質の女の手を取り外へ連れ出そうとした。
「野郎!!」
若林の動きに気づいた犯人が振り返り、
犯人の銃口が若林を捉えた。
![n-TERRORIST-large570.jpg](http://blog-imgs-85.2nt.com/h/a/w/hawks5810/n-TERRORIST-large570s.jpg)
パンッ!!
乾いた音とともに若林の側頭部に衝撃が走った。
> (゚口゚;)うっ・・・・・
> そんな状況になっちゃん?
はい
そんな状況です (^_^;)
このお話は過去に別のSNSで発表したものを改稿しています
当時もそのSNSで非難轟々でした wwww
> そんな状況になっちゃん?
はい
そんな状況です (^_^;)
このお話は過去に別のSNSで発表したものを改稿しています
当時もそのSNSで非難轟々でした wwww
ほーくん |
2016.03.21(月) 13:18 | URL |
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そんな状況になっちゃん?
死んだらアカンわぁ~~(>0<)
でも、側頭部でしょ?・・・
Happyの文字が霞むぅぅぅぅぅ( ̄_ ̄|||)どよ~ん