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2016.06.04 (Sat)

蒼い月光 1(原案 あすか)

このお話はあすかさんというブロガーさんが数年前に発表されたものです
あすかさんはすでにブログをやめてしまっているのですが
ブログを離れても、あすかさんとはたまにメールやLINEでお話をさせていただいております

あすかさんの作風は現代ものが多いのですが
この作品だけ時代劇ものです
あすかさんなりに試行錯誤で書き上げたのですが
どうも納得がいかないということで
今回二人で完璧版にしてみましょうということになり
僭越ながら私のブログで発表させていただくことになりました
(あすかさんは文才があるからブログ引退は惜しいのですけどねえ・・・)

では、あすかさんと私の合作コラボをお楽しみください

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「月称院(げっしょういん)さま・・・・
お世話になりありがとうございました・・・」
孫の祥姫(さちひめ)が婚姻前の挨拶に月称院の部屋へ訪れた。

婚姻とは名ばかりで
力のある大名のもとへ血縁を結ばせるための人質に出すようなものだった。

『いつまで女子(おなご)が犠牲になる世が続くのか・・・』
三つ指をついて頭(こうべ)を垂れる孫が不憫(ふびん)でならなかった。

「どうか元気で暮らすのですよ・・・」
明るく送り出さねばならぬのに、語尾が涙声で震えた

「いやでございますわ。まるで今生のお別れのような・・・
祥姫(さちひめ)は三十万石もの大名様の正室として嫁ぐのですよ
武士の娘として、これ以上の出世はございませんわ」
まだ齢(よわい)13歳の孫娘は屈託のない笑顔を見せた。

『この子はまだわかっておらぬのじゃ・・・
世継ぎを産めなかったときの正室の惨めさを』
月称院はこれまで世継ぎを産めぬばかりに冷たく待遇されてきた正室を幾人も見てきた。
『どうか、この子が世継ぎを産んで正室として敬われますように』
そんな願いをこめて餞別として小さな手裏剣を授けた。


「これは曾(ひい)ばあさまの・・・?」
幼き頃に子守唄がわりに聞かせてあげた物語を覚えてくれていたようだ
その手裏剣にまつわる我が母君、お千代の数奇な物語を・・・・・



。。。。。。。




朱里(あかり)は血生臭い草原を、
身を低くして疾走していた。
すぐ脇を敵軍の足軽兵が勝利を確信して走って行く。

朱里は細心の注意を払い、
なるべく戦場から距離をおいて藪のなかを突き進んだ。
手にしている小太刀は刃こぼれして
ボロボロの状態だった。
今、敵方に遭遇しても太刀打ちするどころか
手負いの兵にすることさえままならないであろう・・・



時に世は、後に言われる戦国時代。

語り継がれる大きな合戦だけでなく、
武将として名を上げんとして、
小さな合戦が日本全国、いたるところで繰り広げられていた。

女忍の朱里が仕(つか)える今成貞虎(いまなりさだとら)もまた、
勢力を拡大しようと隣国に攻め入っていた。

多勢に無勢で勝ち目はなかったが、武将として自国の民や百姓のため
生き残りをかけて捨て身の戦いに討ってでたのであった。

負け戦は目に見えていた。
劣勢の中、貞虎は朱里に敵将の首を討ってこいと命じた。
合戦は将棋と同じように敵将の首を捕った時点で勝利となる。
小国が大国に勝つために、狙うは敵将の首ひとつであった。

朱里は女とはいえ、忍(しのび)としては一流の腕をもっていた。
小さな流派でなく、伊賀や甲賀の忍として生まれていたなら、
間違いなく上級の忍として、名のある武将に仕えていたはずである。
images_20160603194040013.jpg


敵陣を目指す途中で幾多の歩兵を蹴散らした。
だが、その代償として長太刀は折れ、火薬玉は底をつき、
小太刀は刃こぼれが著しく、
使える武器は懐に忍ばせた数本の手裏剣のみであった。

小高い丘の上に、敵方の陣幕が見えた。
朱里は見事な跳躍で陣幕を飛び越え、敵の陣地に降り立った。

「何奴(なにやつ)!?」
不意に現れた「くのいち」に敵陣は色めき立った。
快勝を信じて酒盛りで宴に興じていただけに、その慌てぶりは滑稽であった。

だが、ただ一人、敵将の佐山剣山(さやまけんざん)だけは落ち着き払っていた。
多勢に無勢であるがゆえに、こうした捨て身の戦法をしてくると読んでいた。

「名を名乗れ」
剣山は腰差しを引き抜くと静かに上段に構えながらそう言った。

「忍ゆえ、名乗るべき名前などござらん!」
朱里は戸惑った。
敵将と言うからには、無骨な大男を想像していたが、
目の前の敵将は元服したての子供の面影を残す青年だったからだ。

それ以上に驚いたのは、刀を持っている構えだった。
一寸の隙もなかった。

『肉を切らして骨を絶つ!』それしか朱里には勝機が見当たらなかった。

刃こぼれの小太刀を握りなおして懐に飛び込んだ。

だが、右手の肘に熱湯を浴びせられたような衝撃の瞬間、
朱里の右手は肘から先を切り落とされていた。
だが、それは作戦どおりであった。
残った左手を懐に入れ、手裏剣をまさぐった。
この一本の手裏剣ですべてを終わらせる。

だが、迂闊にも、右腕からの血飛沫が目に入り、視界が霞んだ。
その隙を剣山は見逃さなかった。
左手に握った手裏剣を剣山の首に突き刺すよりも一瞬早く、
朱里の胸に衝撃が走った。

バチンという心(しん)の臓がはじけ割れた音がした。
次の瞬間、五臓六腑からの出血を感じた。
ものの見事に剣山の刃が朱里の心臓を突き刺したのだ。

「敵ながら、あっぱれ!」
これが朱里が聞いた今生の最期の声であった。

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テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

08:51  |  蒼い月光(コラボ作品)  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

Comment

おはようございます☆

文才同士のコラボなんですね(^_−)−☆

戦国時代のお話しですか。。
言葉の言い回しが私には
難しいですが…

流石❗️と感じました(^_−)−☆
airi |  2016.06.04(土) 09:10 | URL |  【編集】

Re: airi さん コメントありがとうございます

> 文才同士のコラボなんですね(^_−)−☆

あすかさんは文才ですが私は単なる雑書きなので・・・
原案自体、かなり出来上がってるので
私が手を入れてグチャグチャにしてしまいそうです

> 戦国時代のお話しですか。。
> 言葉の言い回しが私には
> 難しいですが…

女性にはやはり小難しいかもしれませんね

ほーくん |  2016.06.04(土) 13:12 | URL |  【編集】

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