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2021.06.09 (Wed)

紺屋の女房 9

ブログランキング…
ブロガーの皆さんは気になりますか?

ブログを始めた頃は上位にランキングしたくて
必死こいてましたけど
最近はもうどうにでもなれという気分です。

しかし、しかしですよ
バンバン更新していて
人気のあるブログが上位に来るのはわかるのですが
もう何年も放置しているブログが上位を占めているのは
どうにも納得いかないですね~


さて、お話の方はというと
いよいよ佳境に突入します
あと数話で完結となりますので
どうぞ最後までお付き合いくださいませ

。。。。。。。。。。。

それから久蔵は身を粉にして働いた。
わずかな給金は己の贅沢に一切つかわずに
せっせと貯めこんだ。

そして、計画通りに三年にして、
ようやく10両を貯めることが出来た。
久蔵は10両を握りしめて遊郭に走った。
しかしながら、どこの馬の骨ともわからぬ男が
不意に訪ねてみたところで相手にされぬ。
何がなんでも太夫に会いたいと
久蔵は、茶屋の店先で土下座をした。

そんな騒ぎを聞き付けたのは
顔見せの部屋で今宵も客からあぶれたお鈴であった。
「あいや、あの主(ぬし)さまはいつぞやの…」
三年も前だというのに、情を頂戴した久蔵のことを
お鈴はしっかりと覚えていた。
「一体どうしたといわすのでありんすか」
穢多役人(えたやくにん=遊郭の岡っ引き)に
摘まみ出されようとしているところへお鈴が声をかけた。
「いえね、高尾太夫に会わせろと動こうとしないもんだから
遊郭の外へ摘まみ出すところでございます」
久蔵は穢多役人に殴られても蹴られても
その場を動こうとはせず
手にした10両を掲げていた。
太夫に会うには最低でも10両が必要だと言ったのを
この男は覚えていた!
どんなに必死のおもいで10両を貯めたのかと思うと
胸が熱くなった。
「僅かだけ時間をくんなまし」
遊女よりも位(くらい)の低い穢多役人であるがゆえ
遊女からしばらく待っておけと言われれば
言うことを聞かねばならなかった。
「ほんの僅かな時間でよければ」
穢多役人はつまらなさそうにそう言った。

20210608214950151.jpeg

あまり時間がないのだと
お鈴は急いで高尾太夫の部屋の前にゆき、
襖を開けるのはご法度ゆえに襖の前でひれ伏して叫んだ。
「お願いがありんす。話を聞いてくんなまし!」
お鈴のあまりに切羽詰まった声に
何事かと高尾太夫は尋ねた。
「会いたがっておりんす!男がいんす。
会ってあげてくんなまし」
お鈴とは同じ日に此処に売られてきて
二人で励まし合いながら辛い日々を過ごしてきた。
運良く器量の良さで太夫に登り詰めた高尾太夫だったが
寝間での男の扱いはお鈴の方が上だと
高尾太夫はお鈴を認めていた。
お鈴に目鼻立ちの器量が備わっていれば
立場が逆だったかもしれぬ。
そんなお鈴がなりふり構わずに
太夫に頭を下げて願い事を申し出たのだから
無視するわけにはいかない。

「今宵は月が綺麗でありんす…
少しだけ待ち合い茶屋まで散歩するでありんす」
暗に会ってあげてもいいから
待ち合い茶屋で待っていろという意味だった。
「ありがとうごりんす!」
お鈴は店先に飛んで帰り、久蔵の手を取ると
「ついてきてくんなまし」と
久蔵を待ち合い茶屋に連れていった。
穢多役人には
「ご苦労でありんした帰ってくんなまし」と
役人を蹴散らした。

20210529100916dab.jpeg

「俺は高尾太夫に会いたいんだ
こんなところで酒を呑んでいる場合じゃない!」
待ち合い茶屋で徳利を手に
「一献、呑みなんせ」と酒を薦めるお鈴に
一度だけ肌を重ねた仲とはいえ、
今回はお前に会いに来たのではないと憤慨すると
「太夫の部屋へは、おいそれとは入れないのでありんす
この茶屋で顔繋ぎをするのが大事なのでありんす」と
遊郭の仕組みを教えてくれた。
『なんとまあ焦れったいものなのだな』
まあ、果報は寝て待てというぐらいだ
3年も一生懸命に働いて待ちに待った瞬間なのだから
少しぐらい待たされてもなんということはないと
太夫の到着を今か今かと待ちわびた。

やがて待ち合い茶屋の店先が賑やかになった。
「花魁道中だ!」
「太夫だ!高尾太夫が出てきたぞ!」
花街をウロウロしていた男連中が
口々に高尾太夫を褒め称え、
称賛の思いを口にした。
「到着したようでありんす
あちきはこれにて失礼いたしんす」
お鈴が部屋から出るのと入れ違いに高尾太夫が入ってきた。
「お初にお目にかかります。
手前、紺屋という染物屋の久蔵と申します」
一通り挨拶の口上を申し上げて
久蔵は繁々と高尾太夫の顔を拝見した。
『なんと美しい!
この世にこんなにも美しいおなごがいるとは…』
同じ部屋にいて同じ空気を吸っているだけで
幸せな気分になってくる。
おまけにこの香りはなんであろう?
麝香(ジャコウ)であろうか?
男を虜にする色香が漂ってくる。
高尾太夫は一言も発せずに
煙管(キセル)にタバコの葉を詰めて火を付けた。
ふう~っと紫煙を久蔵に吹き掛けたあと、
火鉢にタンっ!と煙管を叩きつけて
火種を火鉢の中に落とした。
「お時間でありんす。
さらばでありんす」
高尾太夫が初めて発した言葉が別れの言葉であった。

20210529101118db8.jpeg

『冗談じゃねえ!
あんたに会うために俺は3年間も金を貯めこんだんだ!』
久蔵は、ここで帰してなるものかと太夫の手を繋ごうとした。
「触りんせんで!!」
太夫は一喝すると煙管(キセル)で久蔵の手を叩いた。
太夫が声を荒げたので、
廊下に控えていたお鈴が慌てて部屋に飛び込んできた。
「太夫、どうしたでありんすか?」
太夫と客が差し向かいのところに飛び込むのはご法度ゆえ
高尾太夫はお鈴を睨み付けながら
「この野暮(やぼ=田舎者)はなんざんす?
あちきに触ろうとしたでありんす!」
そう言われてお鈴はやれやれといった表情を浮かべ
「こん主(このお客)さまは、遊郭に不慣れでござりんす」
どうぞ、許してやってくださいませと
お鈴は畳に額を押し付けて太夫に詫びた。
「おゆかり様(馴染み客)になるまで
あちきをこうしてお呼びしてくんなんし
お主さまが、あちきにとって
間夫(まぶ=本命の男)になるまで通いなんし」
久蔵が遊郭に不慣れとわかったからか
太夫の言葉に優しさが込められた。
「通えと?俺がお前さんに会うために3年もかかったんだ!
次にまた会うために、再び3年間も身を粉にして働けと?」
遊郭のルールだか何だか知らないけれど
あまりの理不尽さに久蔵は涙をポロポロこぼして泣いた。
「その間にあなたが誰かに見受けされれば一巻の終わり…
今宵一度の逢瀬でございましたが、
これにて今生(こんじょう)のお別れにございます」
久蔵は自分の事を全て話した。
此処へ遊びに来る御大尽(金持ち)に有らず
一介の丁稚奉公人であること、
太夫に一目惚れして
必死にお金を貯めてようやく会いに来たのだと、
涙を溢れさせて語った。
「御大尽に有らずことは気づいておりんした。
主さまの指は染め粉が染み付いてありんす
あちきは盗っ人でもして大金を手に入れ
ここに遊びに来たと思っておりんした」
一目見ただけで太夫に思いを寄せ
一心不乱に働いてきた久蔵を思って太夫も涙を流してくれた。
「お金で枕を交わす卑しい身を
3年も思い詰めていただけるとはなんと情の深いお方…」
太夫はどこにも見受けしませんと言い出した。
「あちきは後2年で年季明けとなりんす
年季が明けたらお主さまの元に嫁ぎに参りんしょう
心変わりせず待っていてくんなまし…」
その言葉を聞いて久蔵は喜び、お鈴は驚いた。

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テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

00:00  |  紺屋の女房  |  Trackback(0)  |  Comment(6)

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紺屋の女房 9

ええーーー
2年待てば・・・その後の展開も気になります。
ロベール.S |  2021.06.09(水) 20:59 | URL |  【編集】

確かにランキングはよく分からない。。。

何年も放置されてるブログが上にあると、どういうことなのかなとは思いますね。。。

まぁ、上にあれば、更新されてなくてもランキングからの訪問者が一定数いて、上位をキープしちゃうんでしょうね。

遊郭って独自文化ですよね。遊女ピラミッドの底辺と頂点との差がとても大きい。。。面白いです。
swinger |  2021.06.10(木) 05:27 | URL |  【編集】

Re: 紺屋の女房 9

ロベールさん、コメントありがとうございます
ようやく終わりが見えてきました
遊女であろうとなかろうと
惚れてしまえば一途になれる男は少ないですよね
いろんな女に目移りしてしまうのが男ですが
さてさて久蔵は…
ほーくん |  2021.06.10(木) 07:01 | URL |  【編集】

Re: 確かにランキングはよく分からない。。。

swingerさん、コメントありがとうございます
芸子、舞妓は独自文科として残りましたが
遊女は赤線廃止で抹殺されてしまいました
時代の流れと言えばそれまでですけど
遊郭が残っていれば私は入り浸りしてしまいそうです(笑)
ほーくん |  2021.06.10(木) 07:07 | URL |  【編集】

何処も

理不尽なことは多いですね。
私も、ブログランキングは不思議だと思っていました。
私の場合、記事を掲載した直後はランキングが上がるのですが、しばらく更新しないと、どんどんランクが落ちて行きます。
全く更新が無いのに上位をキープ出来ているブログがあるのは、本当に不思議です。
おそらく高尾太夫のブログみたいなモノなのかも知れません。😅
それにしても、久蔵様を想う、女将様や鈴様の気持ちがやるせないです。
二年後、高尾太夫は本当に久蔵様の元へ嫁ぐのでしょうか?
風花(かざはな) |  2021.06.10(木) 11:44 | URL |  【編集】

Re: 何処も

風花さん、コメントありがとうございます
ここに来て数年になります。
その間にお休みを頂いた期間があったのですが
更新していなくても同じような順位を行ったり来たりでしたから笑うしかないですよね

さて、久蔵の話をどこまで信じたのか
気高い花魁が庶民の女に成り下がることができるのか
いよいよ残すところ2、3話となります
ほーくん |  2021.06.10(木) 12:43 | URL |  【編集】

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