2021.06.14 (Mon)
女流作家 1
- 男は女を抱き寄せ、優しく口づけをした。
二人の唇が重なった瞬間、時間が止まった。
朝食を食べた後だったので、
その唇は仄かにハニートーストの味がした。
「もう君を一生離さないよ」
男の言葉に女はうなづき、その厚い胸板に顔を埋めた -
完結
菱沼桐子は最終稿をメールに添付すると
出版社の担当者へ送信した。
ほどなくして担当者の辺見義明から
桐子のスマホに連絡してきた。
『先生!いいじゃないですか!
今度もまた重版出来(じゅうはんしゅったい)まちがいなしですよ』
ペラペラと数分に渡り賛辞を桐子に投げ掛けて
通話は終了した。
女子大に通っているときに
趣味で書いていた小説を出版社に投稿し、
それが小説専門の月刊誌に掲載されるやいなや
人気に火がつき、単行本化され、
年末には、その年の新人賞を総なめした。
清純な恋愛小説を好む女性から絶大な支持を得て
桐子は押しもおされぬ文芸小説家として
今の地位を確保した。
だが、数々の小説を書くにつれ
桐子は疲弊していった。
桐子は仕事用の高スペックのノートパソコンを閉じると
「はあ~…」とため息をついて目頭を押さえた。
「最近、無理してるんじゃないんですか?」
専業主夫の夫である晃が食器を洗いながら
カウンターキッチンの向こうから声をかけた。
「ううん、平気、平気」
桐子は努めて明るい声で返事をした。
夫の菱沼晃は女子大生だった桐子が
小説を応募した出版社の社員だった。
桐子の処女作が単行本化される時に
専属の編集担当となった。
忘れもしない、あれは二作目を執筆中の事だった。
締め切りに追われてる時に
よりによって
桐子のワンルームマンションのエアコンが
故障してしまった。
「先生、急いでください。入稿まであと半日ですよ」
急かされれば急かされるほど
暑さと苛立ちでペンが進まない。
菱沼晃も風通しの悪い部屋と
生ぬるい扇風機の風で汗だくになっていた。
冷却シートをおでこに貼り付けても
首筋に汗が流れ落ちてきて集中できない。
「これじゃあサウナで
原稿を書いているようなものです」
この部屋を出ましょうと
晃は桐子を近くのシティホテルに連れていった。
部屋は快適で、
汗ばんだ肌があっという間にサラサラになった。
おかげで無事に時間内に書き上げることができた。
原稿データーを、編集部に送信すると
菱沼晃もようやく落ち着いたのか
安堵の表情を浮かべた。
「先生、ゆっくりとシャワーを浴びてください
どうせ家に帰ってもエアコンが潰れているし
安らげないでしょうから今夜はここに泊まってください
部屋代は出版社の経費で落とせますから」
それを聞いて桐子は助かるわと思った。
シャワーを、浴びて浴室から出ると
豪華なディナーが用意されていた。
「これは?」
そう尋ねると「ルームサービスで頼んじゃいました
大丈夫、経費で落とせますから」
経費で落とせるというのは魔法の言葉だった。
どちらの財布も傷つかないのだから
桐子は悪のりしてどんどんアルコールを頂いた。
菱沼晃はアルコールに強くないのか
「少し横になります」とベッドに横たわると、
すぐにイビキをかいて寝てしまった。
ツインルームだし、
彼の会社の経費だから
彼にも泊まる権利はあるわよねと、
そのまま寝させてあげることにしました。
『でも、スーツのままというのはねえ…
シワになっちゃうわ』
お節介だとは思いながら
桐子は菱沼のスーツを脱がすことにしました。
しかし、スラックスを脱がすと
トランクスが見事にテントを張っていたのです!
「先生、俺、欲情しちゃってます」
寝ていると思った菱沼が
急に起き出して桐子に覆い被さってきたのだった。
。。。。。。。。。。。。
官能小説は男性だけのモノではありません。
いや、もしかしたら愛読者は女性の方が多いかもしれません。
もちろん女性でも官能小説を書く作家さんもいます。
藍川京先生、花房観音先生、丸茂ジュン先生…
活字離れの昨今ですが、
文字にはDVDなどのビジュアルにはない
奥行きの深さがあると思います。
素人ゆえ、駄文の羅列はご勘弁頂き
よければ最後までお付き合いいただければ幸いです。
2021.06.13 (Sun)
関西お湯めぐり 9
さて、今回は過去記事からの抜粋となります。
(なにぶんコロナ禍のために
外出を自粛しておりますので…)
以前にプライベート記事にて書かせて頂いた記事には
温泉の書き込みが抜けていましたので
今回は温泉の事を中心に書かせて頂きます。
ご紹介するのは淡路島の「洲本温泉」です。
私が幼少の頃は、
淡路島と言えばフェリーで行くしか方法がなく
近いんだけど、ちょいと行くには面倒だった
近くて遠い場所でした。
それが今は明石海峡大橋が架かり
マイカーで二時間ほどで行けるようになりました。
高速道路で一気に淡路島を縦断して
一旦、徳島県に入り
鳴門大橋の遊歩道から鳴門の渦潮を観光。
足元がガラス張りになっているので
橋から渦潮を見ることが出来ます。
ガラスの真上から撮影すればよいのですが
何せ高所恐怖症なのでこうして撮影するのが目一杯です。
再び鳴門大橋を戻り洲本温泉へ
今回お邪魔させていただいたのは
「淡路インターナショナルホテル・ザ・サンプラザ」です
オーシャンビューの良いお部屋です。
宿泊料金もリーズナブルです。
オーシャンビューを背景に記念に一枚
デジカメのバッテリー切れのため
スマホで仲居さんに撮ってもらいましたが
フラッシュの光源不足で逆光になってしまいました 泣
翌朝、頑張って早起きして
対岸の和歌山県から昇ってくる朝日をカメラに収めました。
対岸は大阪だと思っていたのですが
仲居さんに聞くと和歌山県だそうです。
これにはびっくりしました。
さて、温泉はというと
洲本温泉は関西でも有名な温泉です。
歴史のある温泉ではなく
発掘されたのは昭和だそうです。
平成5年に新たな源泉が発掘され
湯出量が豊富になり、一気にホテル群が立ち並びました。
こちらのホテルも新源泉からお湯をひいてます。
大浴場はそんなに大きくありません
室外の露天風呂もこんな感じです
・洲本温泉 ★★★☆☆
さらっとしてます、私的にはイマイチでした
泉質:アルカリ単純泉
pH:8.6
湧出量:不明
源泉温度:47.0℃
加温:なし
加水:不明
少量のラドン含有
2021.06.12 (Sat)
紺屋の女房 12
お付き合いくださいました「紺屋の女房」ですが
ついに最終話となりました。
お話的には前回の11話でほとんど終わりなのですが
どうぞ完結までお目を通していただければ幸いです
。、。。。。。。。。。。。
久蔵と高尾が初枕を済ませた翌日、
染物屋「紺屋」は臨時休業となった。
ささやかではあるが二人の祝言を催したのだ。
身内の者は、高尾が遊女あがりと聞かされていたので
あまり乗り気ではなかった。
遊女は梅毒持ちが多いからと
あからさまに不機嫌な人もいた。
しかし、上座に座るお似合いの二人をその目で確かめ、
おまけに腰が低くて、
よく気がつく高尾を
紺屋に嫁いできた嫁として認めさせるには充分だった。
その次の日から紺屋は通常営業に戻った。
花魁暮らしが長かったからと
庶民の暮らしに慣れるまで母屋でゆっくりしておればいいと
吉兵衛をはじめ、お玉や久蔵は気を使ってあげようとしたが
「この店に嫁いできたからには
一刻も早く客商売に慣れとうござんす」と
姉さん被りをして、せっせと接客をした。
ただ、郭言葉(くるわことば)を使うので
遊女上がりだと小馬鹿にする客もいた。
しかし、大半の客はそんなことを気にする人はいなかった。
逆に郭言葉(くるわことば)が面白いと客が押し寄せ、
どんどんと紺屋は繁盛した。
ある日、久蔵が反物を染めていると
その作業を見ていた高尾が
「なぜ、何度も染めやんすか?」と尋ねてきた。
「濃い藍色に染めるには
何度も何度も染めなきゃだめなんだよ」と親切に教えた。
だが、それがかえって高尾の疑問を深めた。
「薄くてはダメでありんすか?」
早染めは淡い色しか出ねえからな、
ほら、これが早染めだ。と言って
淡い青白の布地を見せた。
「綺麗でありんす、
夏の空のように澄んだ青が清潔でありんす」
染め職人は昔気質が多く、
色濃く染めねばならぬと思っていただけに、
淡い青色が綺麗だという発想を持っていなかった。
「ものは試しだ。
高尾、淡い色の反物を売ってみるかい?」
淡い青色の反物で着物をこしらえて、
それを高尾に着せて客の相手をさせたところ、
美人ゆえに、淡い青色が映えて、
早染めの反物が飛ぶように売れた。
瞬く間に染物屋「紺屋」は
江戸一番の大店(おおたな)にまで成長した。
「店が大きくなったから女中を増やさねばならない
誰ぞいい子はいないかねえ」
吉兵衛はポツリと呟いた。
それを聞いた高尾は「心当たりがありんす」と申し出た。
高尾が連れてきた女中は
なんと、お鈴であった。
久蔵は大歓迎した。
お鈴は久蔵と高尾の橋渡しをしてくれた恩人なのだから。
お鈴も高尾同様によく働いた。
丁稚見習いと言いながら
下男同様に紺屋に買われてきた久蔵、
口減らしのために遊郭に売られた高尾とお鈴、
三人は力をあわせて紺屋を繁盛させたのだから
人の未来など誰にもわからないものであると
後々まで語り継がれた。
仲睦まじい二人を見て
「あの2人は死ぬまで一緒だろう。
染屋だけに、あいしあう(愛し合う・藍しあう)ほど、
深ぇ仲だからな」と言わしめたそうな…
おあとがよろしいようで…
完
。。。。。。。。。
「紺屋の女房」いかがだったでしょうか
私の好きな時代劇ポルノです。
読まれていて「あれっ?このお話って…」と
気づいた方もいるかもしれませんが
有名な花魁の高尾太夫を題材にした古典落語の
「紺屋高尾」をモチーフに
ポルノチックにアレンジしました。
もっとよく「紺屋高尾」を知りたい方は
「紺屋高尾」をWikipediaにてお読みくださいませ
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%B4%BA%E5%B1%8B%E9%AB%98%E5%B0%BE
紺屋高尾は実話ということで
染物屋「紺屋」は実在していました。
今も東京都千代田区には「神田紺屋町」として名を残しています。
紺屋があった場所にはビルが建てられ
その一階はなんと「アラジン」と言う名のインド料理店なのです(笑)
2021.06.11 (Fri)
紺屋の女房 11
「さあ、お前の顔をしっかりと拝ませておくれ」
背を向けていた高尾の肩を抱き、
くるりと正面を向かせた。
『ほんに美しい…』
高尾は器量も去ることながら
性分(性格)も長年にわたって
女郎のトップに君臨してきただけあって
申し分のないおなごだった。
「お前を一生大事にする」
久蔵が初めて口にした求愛の言葉であった。
「嬉しいでありんす…」
高尾の目から涙がポロポロと溢れた。
久蔵は涙を優しく舐め取り、
高尾の唇に接吻した。
ちゅっ、ちゅっ、と数回軽く接吻を交わすと
おもむろに口に吸い付き舌を射し込んだ。
幾多もの御大尽が、
金にものを言わせて吸われてきた唇であったが
今宵の接吻は高尾を痺れさせた。
『これが、ほんに好き合う者同士の接吻…』
高尾は一刻も早く、身も心も蕩けさせてほしくて
珍宝(ちんぽ)を握りしめたかったが、
それをグッと我慢した。
はしたない女と思われたくなかった。
下腹部に滑り降りた手がピタリと止まったので
「俺の珍宝(ちんぽ)を
愛(まな)でてくれようとしているんだろ?
躊躇しなくていいんだ
俺の体はお前のもの、お前の体は俺のものなのだから」
久蔵は高尾の手をとり珍宝(ちんぽ)を握らせた。
そして、久蔵もまた、高尾の股間に手をやり
茂みを撫で上げて
指先が亀裂に触れるとそのまま奥をまさぐり始めた。
おさね(クリトリス)を捏ねてやると
「ああ…!お前さま、気持ちようござんす」と
喘いで久蔵の肩に歯を立てた。
「ほら、高尾、お前も俺の珍宝(ちんぽ)を擦っておくれ」
催促すると慣れた手付きで扱(しご)き始めた。
「おお…こりゃ堪らん!」
女将さんの熟練の技にも
引けをとらない手すさび(手コキ)に
自然と腰がヘコヘコしてしまう。
「お前さん、もっと気持ちようなるでありんす」
高尾は、しゃがみこむと珍宝(ちんぽ)を吸い始めた。
「うわぁ!高尾、極楽だぁ~!」
家屋(かおく)には吉兵衛夫妻をはじめ
賄い人も寝ているのだが
そんなことはお構いなしに久蔵は歓喜の声をあげた。
久蔵の部屋から、高尾と久蔵の悦びの声が聴こえる。
「久蔵のやつ、初枕(初夜)を始めよったな」
若い二人の睦まじくも艶かしい声を聴いているうちに齢(よわい=年齢)50に近い吉兵衛も久々に勃起した。
お玉とは一つの布団で寝ているものだから
吉兵衛の股間の強ばりがお玉の尻に
ツンツンと当たってくるのだから
お玉も次第に息が荒くなる。
「まあ!お前さまったら…こんなになって…」
お玉の手が吉兵衛の寝巻きの裾を払い
褌(ふんどし)の上から久々の強ばりを握りしめた。
「思えば儂らも興奮してあのように初枕を迎えたよな」
吉兵衛は天井を見つめながら遠い昔の記憶を
思い出していた。
「お前さまったら、上手く挿せなくて
入れる前に子種を出してしまいましたわね」
お玉も自分達の初枕を思い出しながら
吉兵衛の珍宝(ちんぽ)を扱(しご)き始めた。
「互いに歳をとったが、
お前と夫婦(めおと)になれたのが
儂の人生で最高の喜びだ」
吉兵衛の手は自然とお玉の襟元を割り
垂れはじめた大きな乳房を揉んだ。
あっという間に乳首が勃起して
それを吉兵衛に摘ままれた。
「お玉…久々に…どうじゃ?」
吉兵衛が夫婦の営みを求めてきた。
「お前さま…」
お玉は待ちわびたように寝巻きの帯を解いた。
久々のお玉の裸体であった。
見慣れた裸体ではあるが、
今宵は一段と美しい。
「お玉。愛しておるぞ」
吉兵衛はお玉の体に覆い被さった。
久蔵と高尾の夜の営みの喘ぎ声で
養父と養母が若さを取り戻し
営みはじめた事など露知らず。
若い二人は、まるでこの世に二人だけのように
甘い時を過ごしていた。
「お前さま…欲しいでありんす」
高尾は布団に体を横たえて
膝裏を手で抱えて脚を大きく開いた。
久蔵も一刻も早く挿したくて仕方なかったので
高尾の要求に応えた。
己の強ばりを握りしめ、
たっぷりと潤った高尾の股間の女陰(ほと)にあてがった。
いくつもの男根に汚された女陰(ほと)であったが
初めて男を迎え入れる処女(おぼこ)のように
高尾は胸をときめかした。
陰唇を割り開いて侵入してくる珍宝(ちんぽ)…
高尾は生まれて初めて
男に抱かれる悦びを味わうのだった。
「あああ~!お前さま!好いておりんす!
まごうことなき好いてござんす!!」
亀頭の先が子の宮にぶつかった瞬間、
高尾は初めて絶頂というものを知った。
若い二人の腰使いは屋敷の襖をカタカタと鳴らした。
「儂らも負けてはおられんぞ」
吉兵衛の熱く滾(たぎ)った珍宝(ちんぽ)が
お玉の女陰(ほと)を裂いた。
「あああ!お前さま!たまらないわ!!」
高尾に負けじとお玉の声も大きい。
「ほれほれ、これはどうじゃ?」
吉兵衛の腰が八の字を描く。
「好き!それが一番好きです!!」
ドンドンと突かれるよりも
このように女陰(ほと)の中を
ぐりぐりと抉(えぐ)られるのが好きだった。
2021.06.10 (Thu)
紺屋の女房 10
昨夕、久方振りの党首討論会がありました
党首討論ということで白熱したバトルを期待していましたが
野党からは核心を突いた質疑もなく
総理も相変わらずのらりくらりと
返答にならない同じフレーズの繰り返し…
きっとこの後、内閣不信任案を提出して
却下された後、審議拒否という
何十年も続いてきた不毛な時間が流れるんでしょうかねえ
私はカラオケクラブを主催していますが
再開に際しては
・新規感染者が20名以下が連続10日であること
・陽性率が2%以下が連続10日を記録すること
という風に上記2項目を満足しない限り
オフ会を再開しないというラインを決めてます
素人でもこのような基準値を設定してるのに
なぜ総理はオリンピック開催の基準ラインを示さないのか?
安心安全というボーダーラインを決めるべきだと思うのですが…
今後もワクチン効果がイマイチという結果になったら
次は大阪万博でやるかやらないかでもめそうな気がします。
さて、気を取り直してお話の方に進みましょう
高嶺の花と諦めていた高尾太夫が嫁に行くと言い出しました。
さてさて、どうなることやら…
。。。。。。。。。。。。
「ほんとかえ?ほんに嫁に来てくれるんかね?」
悔し涙が枯れ、今度は喜びの涙が溢れた。
身請けしないという太夫の言葉にお鈴が異義を唱えた。
「太夫、お言葉でありんすが、
このような主さまのところへ嫁がなくても、
どこぞの御大尽のところへ身請けした方が
花魁のためでありんす…」
確かに金持ちの家に身請けされた方が
裕福に暮らせるであろう。
ただ、身請けといういうのは、
この遊郭から御大尽の屋敷に買われてゆくという
人身売買なのだ。
身請けされたとて正妻にはなれず、
御大尽の屋敷で飼い殺され
男の性処理の玩具になるだけなのだ。
「お鈴…、あちきは裕福な暮らしよりも
女の幸せが欲しいでありんす」
女の幸せ…
お鈴はそんなことを考えた事がなかった。
此処に売られてきて女盛りの時期は男に買われて
身請けされて、どこかの御大尽の屋敷で
籠の中の鳥として死んでいくか、
どこにも行く宛もなくこの遊郭に女中として残り
掃除洗濯に明け暮れるかの二者択一だと思っていた。
慕われている男のもとへ嫁ぐという選択肢など
売られてきたときから無いものだと思っていた。
太夫は、嫁となるその道を選ぼうとしている。
羨ましかった。
醜女(しこめ=ブス)の自分には
縁のない道だと己の容姿を呪った。
月日は流れ、高尾太夫の年季が明ける日が来た。
久蔵は高尾太夫がやってくるのを
今か今かと待ちわびた。
「可哀想に…
野暮(田舎者)だから上手くあしらわれただけさ」
吉兵衛はおそらく訪ねてこないであろうと思い、
しょげかえる久蔵をどうやって慰めようかと思案した。
お玉もまた、高尾太夫が来なければ自分の出番だと
久蔵に抱かれてやろうと心を決めていた。
やがて日が暮れ、
店を閉めて夕餉(ゆうげ=夕食)を済ました頃、
カランコロンと下駄の音が紺屋に近づいて来た。
「太夫だ!」
久蔵は悦び勇んでソワソワし始めた。
「日が暮れてから嫁いでくる馬鹿はいねえよ。
どこぞの女中が用事を言いつけられて
歩いているだけさ」
吉兵衛はこの期に及んでも
花魁が嫁に来るなんざ信じていなかった。
お玉も今夜のために裏の井戸端で
せっせと股を洗っていた。
やがて木戸をとんとんと叩く音がして
「ごめんなんし、夜分にごめんなんし」と
なんとも、耳に心地よい声がした。
その声を聞いて「太夫が来た!」と
木戸を開けに久蔵は走り、
まさかとは思いながら吉兵衛はちゃぶ台を片付け、
お玉は慌てて股を手拭いで拭いた。
久蔵に案内されて現れたのは、
これまた絶世の美女だった。
「紹介します、高尾太夫にございます」
そのように紹介された高尾は
居間の手前の廊下に座り三つ指を付いて
「高尾でありんす、可愛がっておくんなまし」と
頭を下げた。
白粉も塗っておらず、
帯は前帯でなくちゃんと後ろに結び
頭には鼈甲(べっこう)の簪(かんざし)もなかったので
美人ではあるけれど、
それが太夫とはにわかには信じられなかったが
話し方が郭言葉(くるわことば)であったので
太夫本人だと信じないわけにはいかなかった。
「あんた、本当に高尾太夫かえ?」
失礼かとは思ったが吉兵衛は念のために聞いてみた。
「ほんざんす…
あ、年季が明けまして、もはや太夫ではござんせん」
依然として廊下に三つ指をついたままだったので
「そうかい、そうかい、
よくぞこんな馬鹿の野暮野郎に嫁いでくださった」
ささ、こっちに入んなよと
吉兵衛は高尾を居間に座らせた。
「ほんにべっぴんさんだねえ」
男に買われて股を開いてきたおなごだから
きっとろくでもないおなごだと思っていたお玉も
礼儀正しく美しい高尾を褒め称えた。
「で…、祝言は明日でいいかい?」
そのように吉兵衛が尋ねたので
そのように段取りをお願いしますと
言いかけた久蔵を制し
「あちきは卑しい女郎あがりでありんす
人並みの祝言などもったいないでありんす
此方に来るのも人目を忍んで夜分を選んだのも
そのような思いからでありんす」
その言葉を聞いて久蔵は惚れ直し
吉兵衛もお玉もすっかり高尾を気に入った。
「そんなことは気にする事はねえ、
お前さんは立派な私たちの息子の嫁だ!」
取り敢えず、質素だけれど
明日に形だけの祝言をあげることにした。
「さあさ、今夜はもう遅いからゆっくりとお休み
久蔵の部屋に煎餅布団だけれど用意してあげるよ」
お玉はそう言って居間を出て
嬉しいような寂しいような複雑な涙をそっと拭った。
さて、寝るとしても嫁入り道具はおろか
何も持たずに来たものだから高尾の寝巻きがない。
「真冬でもごさんせんから
裸で寝ても良いでありんすか?」
高尾の白い肌を見ただけで久蔵は激しく勃起した。
我慢できねえと高尾の背後から抱きついて
豊満な乳を揉んだ。
「ダメでありんす…
まだ祝言も済んでないざんす」
高尾は処女のように恥らんだ。
久蔵は手さえ握ったことのない高尾に
いきなり乳を揉んだ事を詫びながら
「もう何年もおなごを抱いていないから
きっと下手だと思うけど抱かしてくれ」
貴方があちきを惚れてくれてるだけで幸せでありんすから
上手い下手は二の次でありんすと
高尾は久蔵に身を任せた。