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2016.02.26 (Fri)

黒い瞳 1

プロローグ

昨夜からパラパラと降っていた雨が
日付けが変わるころに、どうやら本降りになってきたようだ。

暗く静まり返った室内に激しい雨音がこだまする。

『ああ、いやになっちゃう。明日はお洗濯できないなあ。』
いつもなら、そんなことを考えていただろう。
しかし、今はもうそんなことを気に病む必要はないのだ。


遠くで雷鳴が轟く。

まるで女の心に楔を打つかのように・・・

女は暗い室内の天井を見つめながら考えていた。
『どうしてこうなっちゃたんだろう』
懺悔の思いが胸に去来する。
女は思考を停止させた。
今は何も考えられない。
いや、考えたくもないというのが本音であった。

やがて女の心は空白で満たされてゆく。

ついこの間まで、幸せに満ちた日々に心はタイムバックしてゆく。



一瞬、室内が昼間のように明るくなる。

しばし遅れて空気を裂くような激しい雷鳴が轟く。
まるで女の心を引き裂くかのように・・・

雷鳴に共鳴するかのごとく、女の思考が再び活動しはじめる。
だがそれは現実逃避したかのように、
過去の幸せな日々の思考であった。
OSK201205170035.jpg

『こんな激しい雷雨だもの、きっと娘の由紀子は怯えているはずだわ』
女の脳裏に乳飲み子の鳴き声が響き渡る。

『由紀子のそばに行ってあげなきゃ』
そう思うのだが、身体がまるで十字架に磔にされたように動かない。

『どうして?』
頭は覚醒しているようでも、身体はまだ眠っているのだろうか?
まるで金縛りになったかのように体の自由がきかない。
「由紀子・・・・」
女は、恐る恐る声を発した。
掠れた声ではあるが、己の発した声が室内に流れた。
どうやら発声は大丈夫のようだ。

女は、おもいっきり息を吸い込むと、今できる精一杯の大声を発した。
「由紀ちゃん、大丈夫?由紀子?ねえ由紀子、返事をしなさい!由紀子!!」
その声は暗い室内に反響して、己の鼓膜をジンジンと震えさせた。
再び稲妻の閃光が淳子の網膜を刺激する。
それに呼応するかのように雷鳴が轟き、体の芯を揺り動かした。
一瞬のフラッシュバック。
稲妻の閃光が去って暗闇を取り戻した室内に、
けっして見えるはずなどないのに黒い瞳が女を見つめていた。
まるで漆黒のような黒い瞳が、
室内の暗闇の片隅から女をしっかりと見据えていた。
恐ろしくはなかった。いや、むしろ愛しささえ感じる黒い瞳・・・
そう、この黒い瞳は愛すべきわが娘の由紀子黒い瞳・・・


由紀子の黒い瞳が女を見据えていた。

思い出した!
すべて思い出した!!

「いやあ~~~~!いやよ!・・・由紀子!由紀子~~~!!!!」
女は胸が裂けんばかりに、声を張り上げた。

身体が動かないのではなかった。
白い拘束具に身体の自由を奪われているのだった。

女の目に過去の思い出がどんどんと襲いかかってきた。
いやらしい男の笑みが・・・・
暗がりの中で蠢く男女の営みが・・・
柩の中のやせ細った女の顔・・・・
狂気に満ちた笑顔で己の身体に覆いかぶさる男・・・
やさしく微笑みながら女の唇に接吻する男・・・・
そしてわが娘である由紀子の黒い瞳・・・・

「助けて~~~!!!お願い!・・・誰か!誰か私を助けて~~~!!」
女の悲鳴に、バタバタと数人の足音が近づいてきた・・・・

カチャンと施錠を解く音の後、金属音と共にドアが開く。
パチンと乾いた音と共に、
何度か白い光が瞬いて天井の蛍光灯が居場所を主張するかのごとく点灯した。
暗闇に慣れた女の目に、その光は先ほどの稲妻の閃光よりも眩しかった。
その光を遮るように、数人の男女の顔が女を見下ろした。
「大丈夫ですよ~。すぐに楽になりますからね~。」
やさしい声とは裏腹に、白衣の男性が荒々しく淳子の肩に注射を打つ。
b02d9c49.jpg

数秒後、女の意識が遠のき始める。

「由紀ちゃん、ごめんなさい!ごめんなさい!・・・・
ママを許して・・・ママを許してね・・・・」
薄れる意識の中で、女は涙を流した。



。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

仕事が忙しくて、しばらくブログをおやすみさせていただきました。

休止中にもかかわらず『おーい、がんばれよ』と
ご訪問の足あとを残して激励していただいたみなさま方、
ほんとうにありがとうございました。

さて、今回は少し趣向を変えて、
アダルトではなくデジタルノベルをお送りしたいと思います
19:46  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

Comment

(*^o^*)ほいっ

まずはプロローグ。。。
いったい、どんな展開になっていくんだぁ~~(^^;

アダルト・・・では無いんやね(≧m≦)

影依 |  2016.02.27(土) 00:37 | URL |  【編集】

影依さん コメントありがとうございます


> アダルト・・・では無いんやね(≧m≦)

はい ><
途中でベッドシーンもありますが
基本的に「あん、あん・・・イク、イク~」というのはないです
10年前に他のSNSで発表したお話の使い回しです wwww

ほーくん |  2016.02.27(土) 09:08 | URL |  【編集】

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