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2016.03.05 (Sat)

黒い瞳 9

これから、どうしよう・・・

パートの収入だけでは、かなり苦しい生活になるだろう。



母の父母は母が若いころに亡くなったと生前に母に聞いていた。
祖母や祖父がおれば、相談することもできただろうにと淳子は途方にくれた。

そうだ、お父さん・・・
幼い頃に別れて、顔も知らないけれど私の唯一の肉親・・・

父に相談してみよう、もしかしたらなんらかの援助をしてもらえるかもしれない。

たしか母の遺品を整理しているときに、古びたバッグがあった。
母が家を飛び出すときに持ち出した、唯一の持ち物だったのだろう。

その中から出てきた書簡。
住所は淳子が見知らぬ地名が書かれてあった。
そして母の名字も違っていた。
b0185552_13302734.jpg

これは恐らく離婚前の姓・・・
そして母が父と暮らしていた住所?・・・

そこに父はまだいるだろうか?



1通の書簡の住所を頼りに
淳子はそこを訪ねてみることにした。

書簡の住所をたよりに訪ねてみると、
そこはかなり立派なお屋敷だった。

ここに若き母と幼き自分が暮らしていたのだろか。
表札の姓は間違いなく母の書簡と同一であった。

訪ねてみたものの、
いざとなると怖気づき呼び鈴を押すことを躊躇した。

そうこうするうちに、門扉が開き、壮年の男性が姿を現した。
karejikka.jpg

男性は淳子に気付くとハッと息をのんだ。
「・・・あなたは、ひょっとして淳子ではないのか?」

「えっ?・・・はい・・・淳子です。どうして私だと気付かれたのですか?」

「あなたは、若いころの妻に・・・・あ、元妻にね瓜二つなんですよ。
よく訪ねてきてくれた。さあ、どうぞ中へ・・・」

話を聞くうちに、その壮年の男性こそが父なのだと判った。

「あなたたちが、この家を出て行ってから10年・・
いや12年になるか・・・ちなみにお母さんは元気で暮らしているのかい?」

「ええ・・・実は・・・」
淳子は母が病でこの世を去ったこと、
母の遺品の中から書簡を見つけ、ここを訪れたこと、
自分にはもう父であるあなたしか身寄りがない事を話した。

「そうだったのか・・・死んでしまったか・・・」
父はなにかを悔いるように応接室のテーブルに視線を落とした。

「あなたは、私たちが離婚した理由をお母さんから聞いたことがあるかい?」

「いいえ。」

「私たちは若かった・・・いや、若すぎたんだよ・・・
あなたを身ごもった時期に私は浮気をしてしまった。
いや、決して本気の恋愛ではなかった。
あなたがお腹にいることで、夫婦生活はしばらくご法度となった・・・
私は性欲の捌け口を他の女性に求めた・・・」

父母の離婚の原因・・・今、父の口から真実が聞けるのだ。
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