2017.08.03 (Thu)
バツイチと呼ばないで 1
『康介…おまえの場合、これ以上タイムを縮めるのは難しいんじゃないか?』
水泳部の顧問から浴びた言葉が頭の中でグルグル渦巻いていた。
7歳から始めた水泳で康介は12歳ごろからメキメキと頭角を現した。
ゴールドメダリストと同名ということでマスコミにも何度か取り上げられて
いつしか五輪の晴れ舞台で表彰台に上がるのが康介の夢だった。
だが、高 校 生になると順調に伸びてきたタイムがピタリと止まった。
著名なコーチのもとに出向き何度か指導を受けたが思うようにタイムは伸びなかった。
五輪の夢が遙か彼方に消えかけたとき、顧問からとどめの一言を浴びせられた。
頭を垂れてとぼとぼと帰路の道すがら、自然と己の股間に目がいった。
誰も口にして言わなかったがタイムの伸び悩みの原因を自分で把握していた。
股間の膨らみ…
それが水の抵抗を生み、タイムが出ないのが明白だった。
それが水の抵抗を生み、タイムが出ないのが明白だった。
高 校 に進学するとアソコが異様に発達した。
日に日に成長するイチモツは体の成長を遙かに凌駕した。
高 校 二 年 生 にしては小柄な体格の康介であったが、
イチモツだけはネットで見た黒人の巨大コックのようだった。
自分の持ち物が異様にデカいと知らしめられたのは昨年の夏合宿だった。
みんなと入浴するときに仲間から「康介のってめちゃくちゃデカいよな」とからかわれた。
いや、仲間にしてみればそのデカさに羨望しての一言だったのだが
自分はみんなと違うのだと知ったあの日、康介はかなり落ち込んだ。
「俺もみんなと同じサイズがいい…」ふと漏らした言葉に
「何言ってんだ。それだけデカけりゃ女が寄って集って来るぜ」と言われたが、
水泳一筋の康介にとっては女などどうでもよかった。
そんなことを考えながらとぼとぼと歩いていると
我が家に引っ越し業者のトラックが停車してるのが見えた。
歩みを進めるうちにそのトラックが我が家ではなく
隣の家の前に横付けされているのだとわかった。
『そういえばずっと空き家だったお隣に引っ越して来る人がいると昨夜母さんが言ってたっけ…』
まあ、俺にはどうでもいい話だと思いながら
トラックの横をすり抜けて我が家の玄関に入ろうとすると後ろから女性の声に呼び止められた。
「こちらのお宅の方ですか?」
はあ、そうですが何か?
エプロン姿に軍手をした年の頃は30代前半といったところか…
「あ、ごめんなさい、私、今日ここへ引っ越してきた赤坂と言います。
引っ越しの挨拶をと思って…それで、お父さんかお母さんいる?」
「父は海外赴任なのでいません。母は夜の8時ぐらいに帰ってくると思いますが…」
童顔で小柄な康介を中 学 校 に通っている男の子とでも思ったのか、
問いかけの言葉が子供に話しかけるようだったので康介は少しムッとしながら答えた。
「そうなんだ~。じゃあ、8時ごろ訪ねてみるね。
あ、私、希美子。赤坂希美子よ、よろしくね」
「康介です。八木康介」
「康介君か~。いい名前ね。何年生?」
「S高 校 2年です」
高 校 生であることを強調して、学校名をことさらはっきりと言った。
「そっか、高 校 生なんだ~」
高 校 生だとわかっても口調は変わらない。
もしかしたらこの人はこういう話し方なのだろうなと理解した。
『高 校 生なんだ~…やけに幼く感じたなあ…』
でも変にぐれてなくてピュアないい感じの男の子だわ。
希美子は第一印象で康介に好意を抱いた。
その夜、約束通りに8時に希美子が康介の自宅に挨拶に来た。
母は小躍りして希美子を迎え入れた。
「あなたのような若い女性が越してきてくれて嬉しいわ。
ほら、この居住区って年配者が多いでしょう?話し相手ができて大助かりよ~」
「そんな…若くもないんです。もう38ですから…」
康介は希美子をもっと若いのかなと思っていた。
そう思えるほど均整のとれたプロポーションだった。
希美子は5年前にご主人と別れたのだそうだ。
美大を卒業して画家として生計を立てることができるので
ノビノビと暮らしてるのだそうだ。
「荷物整理は片付きました?」
「一通りは…でもまだまだ片付けないと…
アトリエにしようと考えてたリビングが荷物の山なんです」
「じゃあ、うちの康介を使えばいいわ。小柄だけどスタミナはあるから」
本人の了解なしに母は話を進めた。
「そんな申し訳ないわ」
「いいのよ。明日から夏休みなんだし、
どうせ勉強もしないでブラブラするだけなんだから」
母は完璧に部活のことを忘れているようだ。
まあ、顧問からダメ出しも食らったことだし康介自身も退部しようと思っていたのでどうでもいいが…
その夜、自室でカーテンのすき間から何気なくお隣さんを見ていた。
どうやら康介の自室の向かい側の部屋が希美子の寝室のようだ。
灯りはついていなかったが
月明かりが大きめの窓に差し込んで無造作に設置されたベッドを浮かび上がらせていた。
まだ引っ越しが完了していないのだろう。
窓にはカーテンがなく希美子の寝室が丸見えだった。
『このままカーテンなしにしてくれたらいいのに…』
そうすれば希美子の寝姿を毎晩拝むことができるのにと
そんなことを想像していると股間の巨大なイチモツがムクムクと勃ち始めた。
『うそっ!!俺、希美子さんのことを想像して欲情してる?』
まさか自分がはるか年上の女性を意識していることに驚いていると
ベッドルームに灯りがついた。
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