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2021.06.03 (Thu)

紺屋の女房 5

女房のお玉が腹に差し込みがあるといって
草案先生に診てもらってから半月ほど過ぎた。
草案先生の治療が良かったのか、
診てもらった次の日からバリバリと働きだし
半月たった今も腹の具合が悪いとは
これっぽっちも口に出さなかった。

「旦那様、まことご新造(ごしんぞう=奥さん)さまは
働き者の良い女将でございますなあ」
客の相手をてきぱきとこなすお玉を見て
番頭の佐平はしきりに感心した。
「誠に良い女を妻にめとったものだと
私も鼻が高い。ただ…」
言いよどむ旦那の顔が曇った。
「ただ…なんでございましょう?」
その先が気になって、番頭の佐平は続きを促した。
「うむ…ただ、なんというかお玉の畑が悪いのか
はたまた私の子種が悪いのか
一向に赤子(ややこ)を授かることができんのだ」
四十路(よそじ=40代)の吉兵衛は
先祖代々続いてきた染物屋の「紺屋」が
自分の代で暖簾(のれん)を下ろすことになろうと嘆いた。
「それなら一案がございます」
番頭の佐平は
旦那の吉兵衛の耳元でヒソヒソと話し始めた。
「養子を頂けばよいのです」
それならば吉兵衛も考えていた事であった。
ただ、人様の子を頂戴するにしても
それなりの礼金が必要だし、
後々に本来の父母が金の無心にこられては困ると
二の足を踏んでいたのだ。
「良い子が身近におるではないですか」
はて?どういうことかと
吉兵衛は佐平の意図を読めずにいた。
「久蔵でございますよ。
あいつはほんとに働き者だ
私はね、あいつを仕込めば
金の卵になると目をつけているんですよ」
佐平は、久蔵がこの店に買われて来てからというもの
孫のように可愛がっていた。
「佐平、お前が申すのなら間違いはなかろう。
今夜にでもお玉に相談してみるとしよう」

その夜、番頭の佐平の考えをお玉に打診してみた。
嫌がるかと思いきや、お玉もいたって乗り気であった。
かくして久蔵は吉兵衛の養子となり
下男という身分から「紺屋」という店の跡取りとして
厳しい修行を受けることとなった。


久蔵は頭のいい子で、
読み書きソロバンを、そつなく覚えていった。
そして15歳となり、
元服(げんぷく=現代の成人式)を迎えた日、
吉兵衛は久蔵に、ついて参れと連れ出した。
「どこに連れて行ってくださるのですか?」
久蔵は吉兵衛に尋ねた。
「うむ。お前も無事に元服(げんぷく)したことだし
ひとつお前を男にしてやろうと思ってな」
しばらく歩いてゆくと、ふいに大きな門が見えてきた。
「久しぶりに遊ばせてもらうよ」
吉兵衛は門番の男に気さくに声をかけて
さあ、お入りと久蔵を門の中に手招いた。
門をくぐり抜けて久蔵は腰が抜けるほど驚いた。
そこは昼間かと見間違うばかりに
赤い提灯が等間隔で
通りの奥まで煌々と灯っていた。

20210524221522ca2.jpeg

「父上さま、ここは一体…」
オドオドしながら吉兵衛の後をついていきながら
ここはなんという所なのかと尋ねた。
「ここは遊郭といって、男の遊びだ
一人前の男は皆、ここで浮き世の垢(あか)を流すのだ」
連なっている家屋は
表通りに面した窓が格子になっていて
中を自由に覗くことが出来た。
格子窓の中からは着物を着崩した女達が
乳房の膨らみを強調して男を誘っていた。
「兄さん、遊んでいきなよ
安くしておくよ」
目が合った女は恥ずかしげもなく声を掛けてくる。
「どうだい?好みの女はいるかい?
童貞を捨てさせてもらう女なのだから
じっくりと選べばいい」
選べばいいと言いながら、
なるべく手前の女を選んでおくれよと
吉兵衛は念を押した。
どうやら奥に座っている女ほど高値なのだろう。

20210524223118822.jpeg

童貞を捨てると言ったって、
久蔵の童貞はとっくの昔に
女将さんに捧げたのだから
誰でもよかった。
「では、この子にしようかね」
久蔵が指名した女は、
名をお鈴という肉厚の唇の醜女(しこめ=ブス)であった。
かなりの安値であった、それは醜女(しこめ)ゆえに
誰にも買われずに毎晩油を売っているようなものなので
投げ売りしているようなものだった。
思いがけずにお鈴を買ってもらったものだから
茶屋の親父は喜んだ。
「では、しっかりと楽しむがいい」
吉兵衛もまたそれなりの女を買い、
違う部屋へと消えていった。

「あちきを買ってくれて嬉しいわいな」
お鈴は猪口(ちょこ)を持てと催促する。
買ってくれたお礼にお酌をさせてくんなましと
徳利(とっくり)を手にしてお鈴は微笑んだ。
「いえ…私は元服(げんぷく)したばかりで
酒は呑めないんだよ」
呑めないというよりは呑んだことがなかったので
少し躊躇(ためら)っていたのだ。
「あらあら…
お初心(おぼこ)い顔をしていると思うておりんしたが、
そうでありんしたか…」
話し方がゆっくりで別世界に迷い込んだと思わせた。
そのように告げると
「そうでありんす…
此処(ここ)は浮世離れの遊郭(ゆうかく)…
すべてを忘れてあちきと楽しむでありんす」
酒の口当たりをまろやかにさせていただきますと
お鈴は徳利(とっくり)から酒を自らの口に含むと
久蔵の口に吸い付いてきて
酒を流し込んでくれた。
生まれて初めての酒をお鈴の口から呑ませてもらった。
たちまち胃の腑(ふ)が、かあーっと熱くなり
度胸がついた気になった。
「さあ、あちきを見んなまし」
お鈴は着物の裾を開いて股間を見せた。
お鈴の股間は女将さんのアソコと違い
若い匂いが漂っていた。

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テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

00:00  |  紺屋の女房  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

Comment

遂に

久蔵さまは、養子になったのですね。
女将さんは、不義密通どころか近親相姦?
大変なことになりそうです。
しかも、久蔵様は遊郭へ・・・
凄い展開になって来ましたね😊
風花(かざはな) |  2021.06.05(土) 20:13 | URL |  【編集】

Re: 遂に

風花さん、コメントありがとうございます
原作があるストーリーなので
あまり横道に逸れてばかりではオリジナルに申し訳ないので…
遊郭が登場してきてようやく正規のルートに戻りました(笑)
ほーくん |  2021.06.05(土) 20:17 | URL |  【編集】

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