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2016.07.25 (Mon)

蒼い月光 41(原案 あすか)

昼食を済ませてから、千代は厨房を訪れた。
片隅で小さくなって座ってる鬼食い番の兵吉を見つけると
近づいて小声で語りかけた。

「兵吉・・・私に渡す物が届いておりませぬか?・・・」

「これでございましょうか?」と風呂敷の中から細かく編み込んだ鎖帷子を手渡した。

「ところで、千代さま‥‥余計な詮索とは思いますが、
なぜこのようなものを調達せよと命じられたのでしょか?
よろしければお教えくださいませ」

そのような事は知る必要などないと突き放すこともできたが
千代は山賊の討伐に行きたいのだと正直に語って聞かせた。

「またまた、そのような戯れを‥‥」
兵吉は冗談だと思ったのだろう。
ニコニコと笑顔を見せていたが、千代の真剣な眼差しに、冗談ではないのだと気付いた。
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「なぜに、そのような‥‥
千代さまが一声かければ、城内の猛者どもが我先にと討伐に出向きますものを‥‥」

「今は理由を聞かないでおくれ‥‥」千代の意を決した鋭い眼光に兵吉はたじろいだ

ならば、お耳に入れておきとう事がございますと兵吉は小声で話し始めた。
「千代さま‥‥鎖帷子というものは斬りつけてくる刃には身を守ってくれますが
突きには非常にもろいものでございます」
だから剣山は朱里を討つときに袈裟懸けに刃を振り下ろさずに突き立ててきたのか‥‥

「どうか、その点をお忘れなく‥‥
それと余計だと叱られるのを覚悟で申します、討伐の決戦の折りには、
この兵吉、微力ながらお供いたしますゆえ‥‥」
それはならぬと叱りつけると、お供を許されないのであれば、
討伐の計画を殿にご報告いたしますと気色ばんだ。

「そなたは天井にいるときに誰にも語らぬと約束したではないですか」

「え?な、なぜそのことを・・・」

「声色を変えてもあなただとすぐに気づいておりました」

「お、お見事でございます・・・・」
そう言って平吉はひれ伏した。

「影の者であるならば、黙って私の影となりついてくればいいではないですか」

「・・・・御意」
一人で討伐に出向くつもりであったが
ここは平吉に影働きしてもらうことにした。

時は来た!!

剣山殿に大館(おおやかたさま)の上杉殿より親書が届いた

『いよいよ決戦なり
意を決して援軍に参られよ』

わずか二行の親書であったが、署名の後に血判が押印してあるところをみると、
是が非でも援軍になれという命令に等しかった。

剣山軍は未明より馬に兵糧を積み、甲冑に身を包み上杉領を目指すこととなった。
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剣山は見送る千代をしっかりと抱きしめ、接吻をした。

「必ず生きて戻る!案ずるな」
と何度も繰り返した
千代を嫁に迎え入れるまでは
戦場(いくさば)が、武士(もののふ)としての死に場所じゃ
身命と引き換えにしても手柄をあげて本懐を遂げよと家来に教えていたのだが、
千代を迎えいれた今は
家族のある家来には、腕の一本ぐらいくれてやっても構わぬから
絶対に生きて帰らねばならぬと命令するようになった。

「殿!出陣にございまする」
今生の別れになるやも知れぬ熱い抱擁を引き剥がすように大老が急かした。

「千代!必ず帰る!留守の間、城をしっかりと守るのだぞ!」
そう言って愛馬に飛び乗った。

「ご安心くださいませ!千代は命に代えても城をお守りいたします」
去りゆく剣山の背に声をかけると、剣山は振り返らずに「うむ!」と大きく頷いた。

千代は、小さくなっていく剣山の後ろ姿に向かって深々と頭を垂れた。

城を守ると言っておきながら、支度が整い次第、城を抜け出すのだ‥‥
一世一代の大嘘を、心の底から詫びた。
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2016.07.26 (Tue)

蒼い月光 42(原案 あすか)

千代は、大急ぎで正室の間に戻ると、打ち掛けを脱ぎ捨て、帯を解きはじめた。

「兵吉!降りて参れ!!」

兵吉も只今臨戦の時が来たのだと感じ取ったのだろう、
天井の板を一枚ずらして音もなく飛び降りてきた。
衣装はすでに黒装束に着替えていた。

「兵吉‥‥鎖帷子を着せておくれ」
兵吉が用意してくれた鎖帷子は背面で絞るタイプだったので着用には人の手助けが必要だったのだ。

「ごめん!」
断りをいれて兵吉は手を伸ばした。
天井裏からいつも眺めていた白い素肌‥‥
指先がかすかに肌に触れる、その手触りはまるで絹のように滑らかで何とも言えぬ心地よさを与えた。

「きつくございませんか?」

「大丈夫です」
涼やかな声が鼓膜をくすぐる‥‥

「ほころびなどないか改めさせていただきます」
なにぶん使いこんだ代物ゆえ、ほころびがないとも限りませぬ‥‥
そんな理由をこじつけて兵吉は千代の体を目で舐め回した。

「ごめんつかまつる」
非礼を述べて千代の体の前に回り込んだ。

小ぶりな乳房が帷子の編み目に食い込んでいた。
編み目の隙間から薄い桃色の乳頭が顔を覗かせている。
ダウンロード (16)

ゴクリと生唾が出てしまった。

見事な体‥‥

山賊などに、このお体に指一本さえ触れさせてはならぬと心に誓った。

「異常は見当たりませぬ」
そう告げると、これ以上淫靡な体を目に焼き付けるのは毒だとばかりに
衣装箱から腰元の着物を取り出し、肩にかけて差し上げた。


城内の誰もが浮き足立っていた。

男衆は出陣してしまい、城内には戦力にならない小兵と女だけだった。

腰元の格好をした千代が顔を伏せて城内を急ぎ足で馬舎を目指していても
誰一人とて咎めるものはいなかった。

馬舎に辿り着くと、兵吉がすでに先回りしていた。
「馬の用意は出来ているのですね?」

「はっ!・・・しかし、出陣したために頑丈な馬はすべて持っていかれましたゆえ、
残っているのは老馬しかございませぬ・・・」

兵吉が用意してくれた馬は見るからに老いぼれであったが、
目の輝きは失っていなかった。
これなら峠まで走ってくれるに違いなかった。

老馬にまたがり城の裏門から抜け出し、一目散に峠を目指した。
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城を出るとき兵吉に「影として付いてまいれ!」と命じたが
追走する姿は見当たらず、どこを走っているのかさえわからなかった。
『まこと見事な忍びだわ・・・』
姿、身なりはみすぼらしくとも、兵吉は上忍なのであった。


山道に入ると鬱蒼と生い茂る樹木が昼の陽光を遮断し、ほの暗ささえ感じた。
傾斜がきつくなり老馬も息絶え絶えだった。
少し休ませてあげねば‥‥
そう思い老馬の歩みを止めてあげた瞬間
『これはこれは上玉の女がやってきたものだ』と、
野太い声を轟かし草木を掻き分けて大男達が姿を現した。

「女、どこへ行く?」

「この峠を越えて隣の国へ‥‥」

「可哀想だが、隣国には行けねえな‥‥
なぜなら、お前は俺たちの玩具になってもらわなきゃならねえんでな!」
そう言って股間をみるみるうちに膨らませ始めた。

「そんなご無体な‥‥どうか、通させてくださいませ!‥‥もし、ならぬと言うのなら‥」

「ダメだと言ったらどうするってんだい」
へへへと薄ら笑いを浮かべながら腰紐を解きはじめた。

頭!おこぼれを頂戴させてくださいや
女の匂いを嗅ぎつけて手下共も茂みから姿を現した。
中には我慢できないとばかりに下半身を丸出しにして、
おっ勃てたへのこをシコシコさせてる下衆もいた。

「どうしても通していただけないのであれば‥‥」

「あれば?へへへ‥‥だからどうするってんだい」

「おまえ達を皆殺しにします!」

「へ?皆殺しだとぉ~笑わせるな~!」
千代の目つきが険しくなった。
千代と朱里が入れ代わったのだった。
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千代(朱里)は、その場にしゃがみ込んで足元の落ち葉を掴んで上空に撒いた。
その動作を目に見えないほどの速度で繰り返した。

養父「疾風」に教え込まれた葉隠れの術であった。
落ち葉はみるみるうちに数を増やし、山賊どもの視界を奪った。

朱里は大地を蹴って飛び出し、懐に忍ばせていた短刀で三人の男の首を刺した。

落ち葉が舞い落ちた後、気づけば手下が三人もやられてしまっているのだから
その驚きようは半端ではなかった。

「なんだ~?また忍びの術使いか?
半年前にも夫婦の忍びを谷底に突き落としてやったが、お前もそうしてやる!」

朱里の体から汗が滝のように流れ落ちた。
一気に全滅させたかったのだが、千代の体力が朱里の意志に追いつけないでいた。
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2016.07.27 (Wed)

蒼い月光 43(原案 あすか)

長い戦いはできない・・・・

千代には前々から体力強化をさせてきたが
やはり実戦に向かうだけの体力は身についていなかったようだった。

焦りからか、汗の噴出は半端ではなかった。

千代(朱里)は短刀を握りなおすと一歩前に足を運んだ。
そのとき、お頭がさっと右手を上げた。

『へへへ・・・茂みに弓の名手が隠れているのさ・・・
これでお前も終わりさ・・・』
茂みから弓矢が飛んでくるはずだった・・・
だが一向に矢は放たれない・・

『ん?どうした?』
もう一度、右手を天に向かって突き上げた。

次の瞬間、枝葉をザザザっと鳴らして黒い影が姿を現した。
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「残念だが弓の使い手はあの世に逝っちまったようだぜ」
兵吉が音もなく弓矢の使い手の背後に忍び寄り、首に手裏剣を突き刺していたのだ。

「兵吉!!」

「千代さま、遅れまして申し訳ござらん」
兵吉は千代を守るように前に立ちはだかり、懐から手裏剣を取り出すと
目にも止まらぬ速さで投げ込み、手下どもを一網打尽にした。

残るはお頭ただ1人・・・

「てめえら!許さねえ!!」
お頭は歯ぎしりして悔しがった。
無理もなかった、コツコツと猛者を集めて徒党を組むまでに築き上げた組織を
一瞬にして崩されてしまったのだから‥‥

「覚悟!!」
短刀を脇に構えて走り出したときに、草むらから一本の矢が放たれた。

『ちっ!息の根が止まってなかったか!』
兵吉は素早く跳躍し、身を挺して千代を守った

「ぐっ!」
矢は兵吉の右足の太ももに突き刺さった。
右足がジンジンと痺れた。
「トリカブトか!?‥‥」
足の付け根を真田紐で縛り上げ毒が体中に回るのを防ぐと
腰にぶら下げていた麻袋から蝮を取り出した。
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「目には目を!毒には毒を!!」
これでも喰らいやがれと蝮を矢の放たれた茂みを目掛けて投げつけた。
茂みの中から断末魔の叫び声があがった。
転がるように茂みから飛び出した男の腹に蝮がしっかりと食らいついていた。

喉に突き刺さった手裏剣によって瀕死の状態だったところに
蝮の毒が体に入ってはひとたまりもなかった。
男はあっという間に絶命した。

「拙者としたことがドジを踏んじまって‥‥」
最後の最後で助太刀の力になるどころかお荷物になってしまったことを詫びた。

「なにを申すか、兵吉のおかげで残るは頭ひとり‥‥もとよりさしでの勝負は望んでいたこと‥‥」

だが兵吉は山賊の頭の腕前は、そんじょそこらの猛者など足元にも及ばないことを見抜いていた。
一刻も早く解毒しなければ‥‥
そして千代さまの助太刀をしなければ‥‥

兵吉は懐から解毒玉を取り出して口に含むとガリっと噛み潰した。

「覚悟!」
解毒玉が効いてくれるのを待たずに、千代は頭に挑みかかった。

あと数分!数分だけお待ちください!!
兵吉の叫びが声にならない‥‥
解毒玉の苦味が舌を痺れさせて呂律が回っていなかった。

小太刀を逆手に持ち替えて、頭の喉笛を目掛けて飛びかかった。

「ガハハ!甘いわ!!」
鉈を一振りすると、その刃は千代の小太刀の刀身を捉え、パキンと金属音を残して折ってしまった。

「ガハハ!覚悟しろや!!」
頭が鉈を振り上げた。
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2016.07.28 (Thu)

蒼い月光 44(原案 あすか)

『やられる!!』

覚悟を決めた瞬間、石つぶてが男の後頭部にぶつけられた。

コツン・・・
勢いのない石つぶてだったが千代を切りつけようとする意識を逸らすには充分だった。

「誰だ~~!!!」

「千代さまに刃を向けるとは、この不届もの!!!」
八重が息を切らしながら峠道を駆け上ってきた。
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「八重!!」
来てはいけない!!来ないで!!
力の限り叫んだが八重は懐刀を解きながら駆け寄ってくる。

「千代さま、遅れまして申し訳ございません!!」
城を抜け出す千代に気づき、慌てて後を追いかけたがとんでもない老馬であったため
途中でヘバッてしまい、馬を捨てて駆け上ってきたのだという。

「この不届きもの!!成敗してくれようぞ!!」
懐刀を脇に構え、突き進んだもののいとも簡単に身をかわされてしまった。

この!!この!!この!!!
八重はむちゃくちゃに懐刀を振り回してみたが、男にひと太刀も浴びせることができなかった。

『八重どの・・・・がんばってくだされ・・・あともう少しで解毒が完了いたしまする』
兵吉の手は痺れているものの脚力は戻りつつあった。

だが、八重の動きなど男にとって捕まえることなどいとも簡単なことであった。
「ちょこまかとうるさいやつめ。いい加減に往生せえや!!」
懐刀を持つ手を、あっという間に鷲掴みされてしまった。

男は鉈を振りかぶって、八重の脳天を打ち砕こうとした。

「八重~~~!!!」
千代は足元の小石を拾い上げると指で弾いた。
養父、疾風が教え込んだ「石弾丸」の技であった。

養父ほどの威力はないものの、
急所に当てることができれば絶命させることも可能であった。

この一撃で・・・・
必死の思いをこめて弾いた小石は無情にも男の肩をかすめただけだった。
先ほど男の鉈を受けて、小刀を折られた時の衝撃が手を痺れさせていたからだった。

「こいつも、お前もウザイ奴らよ!!」
まずは邪魔者から失せろと八重の襟をぐいと引き寄せ吊るし上げた。

「ひゃははは~~~谷底へ落ちてしまえ~~!!!」
力任せに八重を谷底めがけて投げ飛ばした。

「きゃあああ~~~」
八重の体は紙吹雪のように舞った。
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「兵吉~~~~~!!!!!」
八重を助け出せと千代は命じた。

「かしこまってござる!!!」
谷へ落下していく八重を目指して兵吉も宙を舞った。

八重を追いかけながらも兵吉は懐に手を忍ばせ、火薬玉を山賊めがけて投げつけた。
だが毒がまだ完全に解毒されておらず、痺れが手元を狂わせた。

フラフラと放り出された火薬玉に千代は気づいた。
あの勢いでは届かない!
小太刀を折られた千代にとって、その火薬玉が唯一の武器だった。

火薬玉を求めて千代も地を蹴った。
見ようによっては男に斬り殺されるよりは谷へ身投げして
命を落とす事を選んだように思われた。

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2016.07.29 (Fri)

蒼い月光 45(原案 あすか)

「がはは、落ちろ、落ちろ!みんなまとめて谷底へ落ちてしまえ」
やれやれ、上玉の女を抱けると思っていたのが仲間を全滅されちまったい。
また一から猛者どもを集めなきゃなんねえじゃねえか‥‥

ハラワタが煮えくり返っていた。
鬱憤晴らしに里へ降りてひと暴れするか

そんな事を考えながら、
谷底へ落下してゆく女を見つめていると
女はクルリと宙返りして男と向かい合った。
女は落下しながらも笑っていた。

『ん?恐怖のあまり気でも狂ったか?』
だが、よく見てみると女の手には砲丸のような玉を掴んでいた。

「父母の仇!思い知れ!!」
千代が腕を振り下ろすと、砲丸は男を目掛け真っ直ぐに襲いかかってきた。

とっさに男は鉈で砲丸を叩き落とした。
次の瞬間、砲丸は閃光を発して炸裂した。
爆風が男の足を、腕を、腹を、頭を吹き飛ばした。
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谷底へ落下しながら男の最期を見届けた、
これで全てが終わった‥‥

もう、思い残すことはこれっぽちもなかった。
いや!違う!
この体は、この命は千代のものなのだ
無傷で千代に返すと誓ったではないか!

谷底に目をやると谷に流れてる川は水量も豊富で水深もかなりあるようだ。
うまく行けば助かる!
朱里は千代の頭を抱え、来るべき衝撃に備えた。

次の瞬間、その衝撃が訪れた。
はるか上空から水面に叩きつけられた衝撃は、水面ではなく石畳に打ちつけられたかのようだった。

川の水は身を切るような冷たさだった。
濡れた着物が手足にまとわりついて泳げない‥‥
千代の体はどんどん川底に引きずりこまれ、浮上することができない。
朱里自身はいくらでも呼吸を止めて水中に潜る自信があったが、千代の体には限界があった。
身体の全細胞が酸素を求め始めた。
着物を脱ぎ捨てなければ‥‥
とにかく手足を自由にしないとこのままでは溺れてしまう。
水中では帯が容易に解けない‥‥
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やがて意識が遠のきはじめた。
目の前が暗くなってゆく。
千代の霊魂が離脱しようとしていた。

『ダメ!千代!まだ逝ってはダメ!!』
朱里が離脱しかける千代の霊魂を必死につなぎ止めた。

その時だった
千代の帯を掴み、グイっと引き寄せる者がいた。
兵吉が沈みゆく千代を見つけ、救助に来たのだった。

着物の水の抵抗は凄まじく、ともすれば川底へ共に引きずり込まれそうになった。

『急がねば・・・!!!』
千代はすでに意識がなかった。
華奢な兵吉は身軽で上忍の類であったが、水難の者を救助する訓練など受けていなかったので難儀した。
歯を食いしばり、必死に水を掻いた。



どうにか岸辺に引きずり出したが、すでに千代は呼吸していなかった。

「ごめん!!!」意識のない千代に謝りをいれて急いで帯を解き、心の蔵のあたりを押した。
今までに実際に施したことはなかったが、
たしか蘇生術とは心の蔵のあるところを手で押すのだと聞いていた。

「千代さま!!!逝ってはいけませぬ!!!戻って来なされ!!!」
必死で蘇生術を施した。
兵吉の濡れた体が燃えるように熱くなり、湯気が立ち上りはじめた。

「息は・・・呼吸はしておりまするか?」
近くで心配げに見守っていた八重が声をかけた。

八重は水面に叩きつけられる寸前のところだったが、
兵吉が追いつき抱き寄せ、首と頭をかばってくれた。
だが着水の際に脚を折り動けずにいた。

『はっ!!!そうだ息だ!!口移しで息を吹き込まなければ・・・!!!』
蘇生術とは心の蔵を押しながら口移しで息を吹き込むこと・・・
師匠に教えられた言葉が鮮明に思いだされた。


「八重さま、どうか力をお貸しくださいませ!!」
兵吉は悲鳴にも似た声で八重に手助けを求めた

蘇生術とは時間との闘い‥‥
たとえ息を吹き返しても時間を要すれば寝たきりになることもあるとか・・・

「八重さま、息を・・・息を吹き込んでくださいませ!!!」

「え?・・・」

「口移しで!!早く!!」

八重は脚を引きずりながら千代のそばに寄った。
覗き込んだ千代の顔が青白い・・・
死人のようだった

早く息を吹き込まなければ!!
八重は焦りながら唇を重ねた。
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いつもと同じ柔らかい唇・・・
だけど氷のように冷たい・・・
人肌の温もりが感じられなかった。

兵吉と八重の共同作業が始まった。

『お願い・・・千代、息を吹き返して・・・』
体を重ね、お互いの秘所を見せあい舐めあった女。
愛情と共に主従関係の太い絆で結ばれた仲ではあったがいつしか我が娘のような慈しみをも抱いていた。
決して逝かせてはならぬ。

『千代さま!逝ってはなりませぬ!』
鬼食い番という下っ端の自分に手をさしのべ大義であると褒めてくれた姫。
身分へだたりなく接してくれる心優しい姫。
命に変えても必ず蘇生させてみせる!

長い時間のように感じられた。
だが実際は数分間の攻防であった。

やがて「ごぼっ」と大量の水を吐き出して千代が息を吹き返した。
二人の思いが奇蹟を与えた。

「千代さま!!!」

「千代~~~!!!」

閉じられていた千代の目が再び日の光を感じて開かれた。

「八重・・・兵吉・・・・」
三人は生(せい)の悦びを味わってしっかりと抱き合った。

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08:40  |  蒼い月光(コラボ作品)  |  Trackback(0)  |  Comment(2)
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