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2016.03.14 (Mon)

黒い瞳 11

「お父さん、失礼します」
寝室を訪ねると、父は上半身を裸にして、ベッドに横たわっていた。

「肩が凝って堪らないんだ。よろしく頼むよ」
肩を指で押すと、父の言うように、カチカチだった。

20分ほどマッサージを続けると、ようやく肩がほぐれてきた。

「淳子・・・」
おもむろに父が問いかけた。

「はい?」

「お前は自分の血液型を知っているかい?」

「ええ、A型ですけど・・・」

「そうだったね・・・私は・・・O型だ」

「・・・・?」

「お母さんもO型だった・・・これが何を意味するかわかるかね?」

「お父さんもお母さんもO型・・・それがなにか?・・」

「血液型の組み合わせって決まってるんだよ・・・
O型同士の父母からは、A型の子供は生まれないんだよ!」

え?・・・・それって・・・

「そう、つまりお前は私とお母さんの間の娘ではないということだ!!」
父はおもむろに起き上がり、淳子を組み伏せた。

「お前は私とは赤の他人なのだ!」
父は私のシャツを引き裂き、胸に顔を埋めた。

「いや!お父さん!なにを・・・」
暴れて抵抗する淳子の頬を父の大きな手が振り下ろされた。
バンッ!大きな音と共に淳子の意識がとんだ。
その隙をぬって、淳子はあっという間に身包みを剥がされた。

意識が戻ったときには淳子の股間に父の熱いたぎりを感じた。
「いやあー!!お父さん!やめてえー!!!」
淳子の許しを乞う声を無視して
父は亀頭を淳子の陰唇をめくるように充てがった。

そして一気に貫かれた。
熱い肉棒に串刺しされ、涙がとめどもなく溢れた。
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「ひどい!ひどすぎます!」
淳子の耳には、父の、はあっ、はあっ、という荒い息づかいしか聞こえてこなかった。

初めて男性を受け入れた感動も淳子には与えられなかった。
ただ父に処女を奪われた痛みと犯された悲しみと怒りだけが淳子を支配した。

「お前は、これから私に尽くすのだ!私を愚弄したお前の母の罪をお前が償うのだ!」
うぉぉー、という野獣の雄たけびと共に、父は淳子の中へ熱いものを注ぎ込んだ。


淳子を陵辱し、満足しきった父はタバコに火をつけ一服するとフーっと紫煙を吐き出した。
「どうだ、女になった気分は」
淳子は父に背を向け、シーツに包まり止めどもなく涙を流した。
「鬼・・・」

「ん?なんだって?」

「あなたは鬼だわ!娘を犯して!人の皮を被った鬼よ!」

父はタバコを、ベッドの宮付きに置いてある灰皿に押し付けて揉み消すやいなや、
淳子の髪を引っつかみ自分の方に振り向かせた。

「鬼だと!では、お前の母はどうなんだ!
他の男の子種で生まれた子を我が娘と騙し、
のうのうと母と妻の座に胡坐をかき、自分の事は棚に置き私を責めたのだぞ!!」

「それは、あなたと母の間の確執ではないですか!
私にその怒りをぶつけるなんてひどすぎます!」

「ふん、あの女が生きていて、私の前に現れたのなら、
もっとひどい凌辱をくれてやったわい!」
そう言うと再び昂ぶってきたのか、猛々しくそそり立った男根を、
処女喪失の証で赤く染まった女陰に荒々しく突っ込んだ。
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「いやっ!やめてくだい!!」

「うるさい!お前は母の過ちを私に償うのだ!
これから毎夜、私を満足させるのだ!」
悪魔のように叫びながら男は腰を振り続けた。
20:12  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

2016.03.15 (Tue)

黒い瞳 12

父の陵辱は毎夜続いた。
父の男根が勃起せぬときは姓具の張形で弄ばれた。

父が外出する際は手錠をかけられ、鎖でベッドの足に拘束された。

『私は生きる屍だ・・・まるであの男の玩具ではないか・・・
悔しい・・・悔しい・・・悔しい!!』

一時は舌を噛み切り絶命の道を選ぼうとした。
しかし、それではあの男に屈服したことになってしまう。
そしてなによりも、亡き母に幸せになると誓った思いが、
絶命の道を思いとどまらせた。



「さあ、淳子。今夜はどんな体位で責めてあげようかな」
ある夜、父はそう言うと淳子をベッド上に拘束し、口をテープで塞がれた。
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『この男は私の反撃を恐れている』
父は決して男根を口に含ませたり、接吻をしようとはしなかった。
恐らく男根を、唇を、噛み千切られるのを恐れたのだ。


「そうだ。今夜は趣きを変えて、素晴らしいひとときを、お前にやろう」
男はそう言うと、
バッグから怪しげな小瓶を取り出した。
それは小さな軟膏ビンだった。
男はその軟膏ビンの蓋を開けると
怪しげなクリームを指にからませ淳子の女陰に塗りたくった。

しばらくすると秘所が燃えているように熱くなってきた。
堪らず身悶える淳子をみて男は
「舶来の高級媚薬の味はどうだ?ふふふ、たまらんだろう。」と言った。

男は淳子の秘所を掻き混ぜた。
女の部分がドーンと爆撃を食らったような衝撃が走った。
「あうっ!!うううっ!!!」
淳子はたまらずにベッドの上で身体をバタン、バタン、と跳ねた。
あっという間に淳子の秘所は白濁の泡立った。
男は潤みを確かめると、中へ入ってきた。
そのときの衝撃はまるで火箸を突っ込まれたかのようだった。

男に注送されてると、
やがて今までに感じたことがなかったのに身体が反応してしまったのだった。
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『いやだ!いやだ!私はこんな男に感じさせられている!』
頭では嫌悪を抱き男の侵入を拒んでいるのに、身体は男を求めている。

「どうだ!たまらんだろ!悶えろ!もっと悶えろ!」

『ううう・・・・』

テープで塞がれた口から喘ぎ声を漏らす自分自身が情けなく、淳子は涙を流した。
やがて喘ぎ声と共に流す涎の為に、口のテープが少し剥がれた。

一瞬、正気に戻った淳子にある考えが閃いた。

「ああ~ん・・ああ~・・」
テープの剥がれた口から悩ましい喘ぎ声をだした。

「ああ・・たまらないわ・・・お願い、身体を自由にして。
もっと快楽を与えてあげるから・・・」

「ふふふ・・・そうかい。そんなにいいのか。
では、自由にしてやろう」

「あああ・・・・お願い、早くぅ~~~・・・
今度は私が上になって腰を振ってあげる・・・」

男は媚薬を過信しすぎたのだ。
媚薬の虜になり、身も心も淫乱な女に変身を遂げたと感じていた。
淳子の拘束を外すとベッドに仰向けに寝転んだ。

「さあ、淳子。来ておくれ・・」

淳子は男にまたがり、男を埋没させる格好をした。
しかし、次に淳子が取った行動は、
すばやくベッドの宮付きに手を伸ばし、
男が愛用しているガラスの灰皿を取り、
思いっきり男の側頭部に一撃を加えた。

「ぐわあー!」
男は頭から血を噴出し苦しんだ。

「死ね!死ね!!死んじまえ!」
淳子は怒りにまかせて何度も何度も灰皿を振り下ろした。
そして男がピクリとも動かなくなったのを確認すると
淳子は衣服を身に着け、一目散に屋敷を後にした。
19:07  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

2016.03.16 (Wed)

黒い瞳 13

~淳子18歳~

 

淳子は鏡台に向かって化粧の最後の仕上げに紅をひく。

もうすぐ、日が暮れる。
夜が淳子の出勤時間だ。



父の家を飛び出した後、淳子はとにかく逃げた。

翌朝の新聞を買いあさり、
傷害事件や殺人事件の記事を探したが父の事は載っていなかった。
案外と軽症だったのかもしれない。
それに父は鬼畜の行為がばれるのを恐れ、
被害届を出さなかったのだろう。

しかしながら、なににもまして、
淳子は生きていくために職を手に入れなければならなかった。

淳子が選んだのは夜の仕事だった。
実入りのよさに惹かれたのはいうまでもなかった。

15歳という年齢は18歳でごまかし通した。
化粧をすれば大人びた顔立ちと体つきで
すんなりと面接にパスした。

夜の仕事といっても風俗関係でなくお水の方を選んだ。

『カエルの子はカエルね』
母と同じ仕事についた自分を淳子はそう思った。
この仕事について3年。
今や面接時に嘘をついた年齢に追いついてしまった。

自分でも天職ではないかと思えるほど、
お水の仕事には早くからなじめた。

今や、お店ではナンバー1の売れっ子ホステスだ。
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お給料もトントン拍子に増え、
賃貸ではあるがマンションに住めるようにもなった。

ある夜、ご新規さんのお客さまの接客をすることになった。
席に着き、お客様の顔を見て淳子は悲鳴を出しそうになった。

なんと、母が結婚詐欺の被害にあったとき、
犯人に手錠をかけた若い方の刑事だったからだ。

「あれっ?君どこかで前に一度会ったかな?」
刑事は淳子を覚えていた。
いや、正確には母を覚えていたのだ。
それほど、淳子は母の生き写しであったのだ。

「そうかい、あの時の娘さんかい。
それでお母さんはお元気に暮らしているかい?」

あれから必死になって生きてきたこと、
そして母の死などをかいつまんで話した。

「犯人を検挙したものの、
ろくに相談にも乗ってやれず申し訳ないことをした」
そういって刑事は頭を下げた。

「ちょっと、やめてくださいよ。
さあ、頭をおあげください。
こんなとこ、ママさんに見られたら怒られちゃうわ」

「えっ?あっ、そうか。それはすまん」
そういって、また頭を下げた。

「もう、いやだわ。刑事さんったら。うふふ」

「その刑事さんというのはやめてくれないか」

刑事は若林健太と名乗った。
淳子の家で初めて出会ったのが25歳で、
現在37歳だと教えてくれた。

話をするうちに若林はこの度、仕事上で失敗をしてしまい、
落ち込む気持ちを吹っ切る為に飲みにきたのだと言った。

「しかし、この店を選んで正解だったよ。あなたのような奇麗な人に出会えたし」
そう言って、水割りをおいしそうに飲んだ。

おかわりを作りながら、綾子と言います。どうぞ、ご贔屓に。
そう笑顔で言って、グラスをテーブルに置いた。
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「それは、源氏名でしょう?本名は?」
若林は執拗に淳子の本名を知りたがった。

だ~め。教えない。
もっと、もっとお店に顔をだしてくれたら教えるわ。
淳子はそう言って営業スマイルではなく、
なぜかこの男には自然な笑みで接していた。



若林は非番の日には必ず店に顔をだした。

ついに淳子は根負けしてしまった。
「私の本名は淳子。」

「淳子かあ・・・いい名だ。
どうだろう、本名を教えてくれた記念日として、
この後、寿司でもつまみにいかないかい」

えっ?アフターのお誘い?

「こんな、おじさんが相手だといやかな?」

「いいえ、とんでもない。お付き合いさせていただきますわ」
淳子は思いがけず胸がときめいた。

アフターは何度も経験してる。
指名してくれて、お金を落としてくれる客には体も許した。
そう、何人もの男が私を抱いた。

そうやって淳子はトップになったのだから。

だが今回は違う。胸がときめくのだ。
若林のバリトンの声・・・。
均整のとれた引き締まった体躯・・・。
刑事らしからぬ甘いマスク・・・。
淳子は若林に惚れてしまったのかもしれない。

淳子はその夜、若林に抱かれた。
若林は淳子をやさしく扱ってくれた。
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今までアフターをしたあと、
男に抱かれることはあっても心は許さなかった。
ビジネスとして割り切った。

だが、若林と共にした一夜は別だった。
すばらしい一夜であった。

淳子は、若林に惚れていることを確信した。
その後もアフターを重ね、何度も愛し合った。
それはアフターというよりも、深夜のデートといっても過言ではなかった。

20:10  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

2016.03.17 (Thu)

黒い瞳 14

ある夜、店に訪れた若林はいつになく無口であった。

いつも以上にグラスを空け、途中、席を立ちトイレに駆け込みリバースした。
「健太・・・大丈夫?」トイレから席にもどった若林の耳元で淳子は尋ねた。
ああ、大丈夫。といいながらも若林の顔面は蒼白だった。

店が終わるまで、若林をカウンターの隅で休ませた。


「綾ちゃん、後片付けはいいから若ちゃんを送ってあげなさいな」

ママさんの好意に甘え、さあ、若ちゃん帰りましょ、と、若林に肩を貸し店を後にした。

酔い覚ましに、近くの公園のベンチに二人は腰掛けた。

若林はいくぶん酔いから醒めたようで、自販機で買った水をガブガブ飲んだ。

「いったい今夜はどうしちゃたの?」

思いつめた顔をしていた若林は「よしっ」と小さく気合を入れると、
淳子の前に回りこみ膝まづき淳子を見上げた。
そして、背広の内ポケットから小さな箱を取り出し、
箱のフタを開けながら淳子に「結婚してください」とプロポーズした。
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箱の中には小さなダイヤが付いた指輪が輝いていた。

「こんなおじさんだけど、
淳子を愛する気持ちは誰にも負けないつもりだ。
幸せにすると約束する。結婚してください」

淳子の頬を涙が伝った。
そして、その涙は過去に何度も流した悲しみの涙でなく、
初めて流す喜びの涙であった。


結婚式は仲間内で淳子が勤めているお店でおこなった。

盛大に・・・というわけにはいかなかった。
なにせ淳子には身内がいないからなのだ。
集まってくれたのは若林の身内と同僚、淳子の仕事仲間だった。

「若ちゃん、うちのナンバー1を引き抜いたんだから幸せにしてやってよ」 
ママさんが化粧が崩れるのも気にせず、おんおん泣いてくれた。

「綾ちゃん、たまには遊びにきてよね。ナンバー1の座は私が引き継ぐから」

「ちょっと、なにいってんのよ。私が引き継ぐの」

「若さからいったら私が引き継ぐべきよねえ」

ホステスたちは軽口をたたきながらも目は潤んでいた。


「若、年寄りのくせに、どえらい若いべっぴんをものにしたのお」

「早く2世を作らなきゃ還暦がきますよ」

「ムリムリ、こいつのはマグナムじゃなく12口径だからな」

「淳子さ~ん、若さんで物足りなかったら俺のところへ来なよ~」

いかつい顔の刑事たちも
アルコールが入ると茶目っ気たっぷりのおじさま族に変身した。


淳子は幸せだった。
花嫁衣裳の白のウエディングドレス姿を
母に見せてあげれなかったのが残念だが・・・


「淳子さん、いたらぬ息子ですけど、どうか添い遂げてやってくださいな」
若林の母がフロアに正座して深々とおじぎした。

「お義母さま、私こそふつつかな女ですが、よろしくお願いします」
あわてて淳子もフロアに正座して三つ指をついておじぎした。
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「なに固い挨拶をしてるんだ。
今日からは淳子さんは、わし等の娘じゃないか。
それよりも、わしは早く孫の顔がみたいわい。
なにせ片足、いや体半分、棺おけに突っ込んでるからのう」
二人の肩をポンポンと手で叩きながら立ち上がることを促しながら、
若林の父は照れながら軽口を言った。

「親父、なに縁起でもねえこと言ってんだよ」
若林も上機嫌だった。
仲間たちからお酒を勧められ、断りもせずに次々とグラスを空けていたので
すでに真っ赤な顔をしていた。

淳子は今まで孤独だと思っていたが、
こうして祝福の輪の中に入って
初めてこんなにも素晴らしい人たちが私を支えてくれていることに感謝した。

私はもう一人じゃない。
仲間がいる。
友がいる。
愛すべき健太がいる。


そして、お腹の中には・・・

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20:43  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

2016.03.18 (Fri)

黒い瞳 15

~淳子19歳~

「淳子、もうすぐだな」
そういって若林は大きく膨れた淳子のお腹をさすった。

「あなた、まだ予定日まではあと10日もあるのよ。」

「10日なんて、あっと言う間じゃないか。
そうだ!俺が非番の日に帝王切開してだしちゃえ。なら、あと3日だ」

「いやだ、なに言ってるのよ。私たちの初めての子よ、ちゃんと産むわ」

「ああもう、早く生まれてくれよ。俺の息子」

「娘かもしれないわよ」

二人で相談して、生まれてくる子の性別は、
産婦人科の先生に聞かないことにしていた。

『でも、この子は女の子・・・』
淳子には確信があった。
エコーで見たわが子の影には
男のシンボルがなかったような気がしていたからだ。

『この子は女の子・・・かわいい、かわいい私たちの娘・・・』

しかし、若林は男の子だと信じて疑わなかった。
ベビー服も、おもちゃも、男の子用を用意していた。
『ふふふ・・おバカなパパさんですこと』

「なあなあ、名前・・・
俺たちの一文字を取って「淳太」ってやっぱり変かなあ?」

「いいわよ。男の子ならね。でも、女の子なら私が決めるわよ」

「ああいいさ。絶対に男に決まってるさ。なあ、淳太」
そう言ってまたお腹をさすった。

「おっ!今、蹴ったよな?」

「そうね。私は女よバカなパパさんって言ったのよ。うふふ」
淳子は、女の子なら母、由江から一文字もらい
由紀子にしようと決めていた。


それは、梅雨の中休みと言うべきか、
昨夜からのシトシトと降っていった雨があがり
久しぶりの太陽が顔をのぞかせていた。

しかし、梅雨時期独特の湿った空気が体にまとわりつき、
じっとりと汗ばむ昼下がりであった。

さて、夕飯の買い物にでかけるか。
テレビは朝から人質立てこもりのニュースでもちきりだった。
『健太が朝早くから呼び出されたのは、この事件ね』
だとしたら、解決するまで健太は帰って来ないかもしれない。

夕飯の支度、難しいなあ。
淳子の分だけでいいのか、
それとも早く解決した場合は二人分必要だし・・・

迷っているうちにお腹に痛みを感じた。
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『イタタ・・あれっ?これって・・陣痛?』
いざというときの為に、入院出産の準備は整えてある。

「初産だし、不安・・・やっぱりお義母さまに来ていただこう」
電話をすると、
嬉しそうに「そう。ようやくきたのね。
大丈夫。すぐいってあげるわ」そういってくれた。

義母が到着するころには陣痛が規則ただしく襲うようになっていた。

「まあ大変。さあいそぎましょう」
タクシーで病院へ行くと、すぐさま分娩室に入った。


一方、健太達警察と人質立てこもり犯との睨み合いは続いていた。

「課長!俺が先陣を切ります!」
立てこもり12時間・・・
犯人は苛立ち、人質の女性も体力的にきつくなりつつあった。

犯人の要求どおり食事を用意させた。
その出前もちに変装し突入を試みることとなった。
その大役を若林が買って出たのだ。

「奴は拳銃を所持している。防弾チョッキを着用すること!
そして、くれぐれも無理はするな。いいか!」
指揮をとる管理官の目も緊張と疲労からか真っ赤に充血していた。

「はいっ!」
健太は同僚から防弾チョッキを受け取ると
慎重に装着した。



「はい、ひーひーふー。がんばって。ひーひーふー」
ベテラン助産婦さんののんびりした声が分娩室に響いた。

『なにがひーひーふーよっ!こんなに痛いなんて思ってもみなかったわ!』
看護婦たちの事務的な台詞。
力をいれてもなかなか我が子はでてくれそうにもない。
額から大粒の汗が流れる。

『まったく冗談じゃないわ。この子、健太に似てしぶといんだから』

「はい、ひーひーふー。もう少しよ、そうそう頭がでてきたわ」

『うわあーっ!なんっていう痛さよ!は・や・く、でなさい!このっバカ娘!!』
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若林はビルの陰にバックアップの捜査員の姿を確かめ
アイコンタクトを取ると、おかもちを手に提げハイツの中に入った。
犯人と接触し、注意を逸らさせているうちに
裏の窓からSATが侵入する作戦なのだ。

ドアの前に立ち、中の様子を伺った。
室内からは物音ひとつしない。
ドアホンを鳴らす。

「誰だ!」
苛立ちの声を荒らげて犯人が応答した。

「まいど~。食事をお持ちしました~。」
犯人を刺激しないように、間の抜けた声を発した。

「警察だろうが!」

「とんでもないですよ。
ほんとに食事を持ってきた近所のレストランの店員ですう~」

「カギを開けてやるから、ドアを大きく開けて姿をみせろ」

カチャというカギが外れる音・・・
若林はドアを大きく開けた。
犯人が人質のこめかみに銃口を当てている。

「なんか物騒っすねえ」そう言いながら一歩踏み出した。

「動くな!メシをそこへ置いてとっとと帰りやがれ!」

『ダメだ・・・中へ入れない・・・』
言われるまま、おかもちを玄関内へ置き
立ち去ろうとしたそのとき・・・

パリン!ガラスの割れる音がした。

「くそっ!サツか?」
男が後ろを振り返り、女を自由にした。

『今だ!』
若林は中へ踏み込み、
人質の女の手を取り外へ連れ出そうとした。

「野郎!!」
若林の動きに気づいた犯人が振り返り、
犯人の銃口が若林を捉えた。
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パンッ!!
乾いた音とともに若林の側頭部に衝撃が走った。

21:17  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)
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