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2020.10.14 (Wed)

蒼い春 12

4月1日・・・・ 
入学式であるとともに
奈央の入社式でもあった。 
さわやかな気持ちと同様、
洋服はピンクのフレスカートを選んだ。 
「緊張してる?」 
一緒に出勤してくれる幸久が声をかけてくれた。 
「はい・・・あ、いいえ大丈夫です。」 
いけない、いけない。
こんなに緊張していたらいい仕事ができないわ。 
奈央は大丈夫という意思表示を笑顔で示そうとしたが、
ぎこちないひきつった笑顔であることが自分でもわかった。 

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入学式の前に、
教員室で簡素な入社式が行われた。 
学園長を兼務する理事長の丸岡が
「え~、では今期より
我々と一緒に生徒の教育と指導に尽力してくれる
2人の若者を紹介します。」と言ったあとに
奈央ともう一人の青年が前に呼び出された。 
「え~、退職された養護教員の補充として
来ていただいた森下 奈央先生と、
保健体育の新人教諭の沢口颯太先生です。」 
では、自己紹介を・・・ 
そう促されて簡単な自己紹介をはじめた。 
心臓が早鐘を打ち、
口から飛び出そうだったが
なんとかうまく言えたと思う。 
もう一人の同期メンバーは見覚えがあった。 
確か、体操の五輪候補として
マスコミを賑わした男だった。 
肩を怪我して体操の道をあきらめて
教諭の道を選んだのだと自己紹介でわかった。 
さすがに体操で
何度も大会の修羅場をくぐり抜けてきた男だけに、
自己紹介も堂々としていた。 
「森下先生・・同期としてがんばりましょうね。」 
小さな声で耳元で囁かれたとき、
別の意味で心臓がドキドキして
赤面するのが自分でもわかった。 

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入学式では登壇することはなかったが、
教諭席から新入生の姿を眺めてみて
丸岡が言った言葉を思い出さずにいられなかった。 
茶髪ならまだかわいいほうで
金髪やら長髪やら美容室に飾られてる写真のような
ヘアースタイルのオンパレードだった。 
まさか保健室で喧嘩騒ぎになることはないだろうけど、
気持ちを引き締めなきゃと思わずにはいられなかった。 

「森下先生!」 
行事を終え、
帰途の途中で後ろから声をかけられた。 
振り返ると同期の沢口先生だった。 
「あの・・・よければ同期の親睦を兼ねて
飯でも食いにいきませんか?」 
思いがけないお誘いだった。 
困った顔をしていると
「行ってきなさい。
同期としていろいろお話も弾んで
リラックスできるでしょうし」と
幸久先生が背中を押してくれた。  
「え・・・っと・・・・・
美術の月島先生でしたよね?」 
沢口が少し怪訝そうな顔をした。 
「はい。美術の月島です。
わけあって奈央、あ、いや森下先生の親代わりをしています。」 2人の関係を変に誤解されないように
先に二人の関係を話してくれた。 
「そうなんですか・・・
あ、けっして森下先生を口説こうとかそんなんじゃ・・」 
わかってますよ。沢口の弁解を諭して幸久は笑顔を返した。 「若い同期の二人が仲良くするのはいいことです。
私からもお願いします、
奈央ちゃんをよろしくお願いします。」 
沢口に一礼すると
「じゃあ、奈央ちゃん。
楽しんでらっしゃい。
沢口先生、遅くなるようでしたら
奈央ちゃんを送ってくださいね。」
そう言って、じゃあねと手を振って
二人の若い教諭をその場に残して
幸久は帰途についた。

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テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

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