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2016.07.30 (Sat)

蒼い月光 最終話(原案 あすか)

「ほんとに奇跡でございました・・・」
落ち着いた頃、兵吉が救出時のことをポツリと話し始めた。

八重を助けて川辺で足の骨折部分に添え木を巻きつけて手当していた時だった。
八重が落下してくる千代を見つけた。
「兵吉!千代さまが・・・」
兵吉が振り返るのと水柱が立ち上るのが同時だった。

「私は大丈夫、早く千代さまを!」
八重が声を出すのと同時に兵吉は大岩の上から川面を目掛けて跳躍した。

千代は川面に浮上してこない。
兵吉は千代の落下したあたりで潜水してみた。
だが千代の姿は見当たらない‥‥
『流されたか』
早く見つけなければと焦った。

そのときだった。
川底から眩い光が兵吉を誘った。
『ん?あれは‥‥』
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光の正体は銀箔に飾られた長細い箱だった。
その箱の脇に千代は沈んでいた。


「まさに奇跡でございました。あの光がなければ見つけることができなかったやもしれませぬ」
銀箔の箱‥‥
それはまさしく朱里の棺ではないか。

「さらに不思議な光景だったのは、
その箱を愛しく抱きかかえるように二つの遺体がございました‥‥
まるでその箱を守っているかのように‥‥」
疾風とウズメに違いない!

千代は兵吉にその箱が沈んでいるおよその場所を聞き出すと
疲れた体にムチ打って川に飛び込んだ。

「千代さまは大丈夫でしょうか?」
兵吉が心配げに八重に問いかけた、
付いていってあげるべきかとお伺いしているかのようだった。
「大丈夫でございまする‥‥
兵吉、この世には私たちには理解できぬ摩訶不思議な事がございますゆえ‥‥」
そう告げる八重の顔を、兵吉は理解できずに眺めていた。


そのころ千代は川底で棺を発見していた。
棺を抱きかかえる二体の遺体を見ると涙がとめどなく溢れた。
「父さま、母さま‥‥朱里でございます‥‥」
血の繋がっていない私をこんなにも慈愛してくれていたなんて‥‥
川に落下した時点で事切れていたはずなのに
慈愛が二人を棺のもとまでたどり着かせたのであろう。

二本の光が上空から川底に降り注いだ。
その光景を川辺から八重と兵吉は不思議な面もちで見つめていた。
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二本の光は千代を優しく包み込んだ。

『朱里‥‥』

『我が娘よ‥‥迎えに来たよ』

ウズメと疾風の魂に抱きしめられた。

「父さま、母さま‥‥」
もう、この世に未練はなかった‥‥

だが千代と別れる淋しさが朱里を躊躇させていた。

『千代殿とはすぐにまた逢えるわ』

『この意味、霊魂となった朱里ならば理解できよう』

それだけで充分だった、しばしの別れ・・・
朱里の霊魂は千代の体から離脱して疾風とウズメの魂に飛び込んだ。
離脱の際、千代の体はビリビリと痺れた・・・
まるで射精を終えた男根が強張りを失い、膣から抜け出る感覚に似ていた。

朱里が離脱したことで、千代自身が覚醒した。
目の前に二つの霊魂に抱きかかえられた朱里がいた。
『お別れなの・・・?』
千代の問いかけに朱里が優しく微笑むかの如くさらに激しく眩いばかりの光を発した。
『千代のおかげで本懐を遂げることができました・・・ありがとう・・・
礼を言わせてくださいませ・・・』

「待って!!!行かないで!!私を一人にしないで!!!」
叫ぶと一気に肺の中の空気を消費した。
堪えきれずに新鮮な空気を求めて浮上した、
川岸には心配そうに覗き込む八重の顔があった。




初夏の日差しが眩かった。
剣山は落ち着いて待つことができなかった、
せわしなく正室の間の前の廊下を行ったり来たりしていた。

昨秋の合戦を勝利で終え、無事に帰還してから剣山はそれまで以上に千代を溺愛した。
年が明ける頃、千代が身ごもっていることが判明した。

お世継ぎを・・・
家来たちは男児を出産することを祈っていたが、
剣山と千代は生まれ来る赤子が男児でも女児でもかまわなかった。

『無事に生まれてくれたらそれでよいのだ・・・
母子ともに健康であれば、何も望まぬ・・・』
そのときだった、襖の向こうから元気な赤子の産声が聞こえた。


「千代さま、姫君にございます」
産婆が複雑な表情でそう告げた。
産着に包まれた我が子を抱いた瞬間、懐かしさがこみあげてきた。


『おかえり、朱里‥‥私が母よ‥‥』
赤子は嬉しそうに千代の乳首に吸い付き、母乳を飲んだ。
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07:41  |  蒼い月光(コラボ作品)  |  Trackback(0)  |  Comment(2)
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