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2016.07.24 (Sun)

蒼い月光 40(原案あすか)

疾風は着地の瞬間、古傷の太ももに激痛が走った。
膝をついてその場にしゃがみ込んでしまった。
「ちょこまかと飛び回る奴らじゃのぉ」
猛者の一人が脇差しを抜き、疾風に襲いかかった。
疾風は足元の小石を拾い上げると、その小石を指で弾いた。
弾かれた小石は、まるで弾丸のようにその男の胸を突き抜けた。
「ぐふっ!!」口から血を吐き出しながら男は絶命した。

「みんな、油断するな!こやつら、ただの百姓なんかじゃねえ!
どうやら忍びの術を身に付けてるようじゃ!」
山賊の頭の一言で、猛者どもの目つきが変わった。

「あっという間に二人がやられた。気合い入れて掛かれや!!」

「おう!!」と言うかけ声と共に、山賊達が一斉に刀を抜いた。
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「あなた!!」
ウズメは太ももを押さえてうずくまる疾風のもとへ駆け寄った。

「大丈夫だ。古傷が痛みだしただけだ」
そう言ってはいるが、疾風の額からは激痛のために脂汗が噴き出ていた。

「そいつらは、お前たちに任せたぞ、俺はお宝を拝ませてもらうぜ」
山賊の頭が大股で朱里の棺に近づいてゆく。

「やめてー!」
朱里を汚らわしい山賊の目に触れさせたくはなかった。
「俺は大丈夫だ。行け!!」
疾風がウズメの背を押した。
刀を振り回し、敵を威嚇しながら一目散に棺を護ろうと走った。

「その汚い手をどけろー!!」
棺の蓋に手をかけてる山賊の頭の腕を切り落とそうと
上段に構えたウズメのわき腹に激痛が走った。

矢が深々とわき腹に突き刺さっていた。
『ぐっ!まだ敵が隠れていたのか!』
鏃(やじり)には毒が塗られていたのだろう
ウズメの体は瞬く間に痺れて自由を失っていた。
「あばよ!年増のくの一さんよ!」
頭の刃が頭上から振り下ろされた。
次の瞬間、ウズメは袈裟懸けに体を切り裂かれた。
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「ウズメー!!」
痛む足を引きずりながら、疾風はウズメのもとへ駆け寄ろうとした。
だが、その背中に何本もの刃が刺し貫いた。
「うぎゃー!」
切っ先は背骨を削り、内臓を切り裂いていた。

「ウ‥ウズメ‥‥」
目が霞み、視力が失われる前にかろうじてウズメの手を握った。

ウズメはすでに絶命していた。
『待ってくれ、俺も逝くから‥‥』
ウズメの体に重なるように疾風も絶命した。

「けっ!!面倒かけやがって・・・仲間が2人も減っちまったじゃねえか」
ブツブツ言いながら「どれ、お宝を拝ませていただくか」と柩の蓋を跳ね上げた。

そこには腐りかけの朱里の骸が横たえられていた。
「なんだ~~?ほんとに棺桶だったのかよ!」
やってらんねえぜ、と言いながら大八車ごと柩を谷底へ蹴落とした。

「おい!!そのくたばった奴も谷底へ落としちまえ!!」
頭の命令で部下の男たちがウズメと疾風の亡骸を谷底へ投げ込んだ。

事の一部始終を朱里の意識は見ていた。
やがて谷底から光の帯が2本、天に向かって伸びていく。

その光の橋をウズメと疾風が昇ってゆく・・・・
ウズメと疾風は生まれたばかりの魂なので生きていた時の姿をしていた。
意識だけの姿となった朱里をウズメが見つけた。
『一緒に行こう・・・』手を差し伸べてくれたが、朱里の怒りの意識は
地上に留まることを選択した。


白い霞がサーっと晴れてゆく・・・・

「そいつが朱理が討ちたい相手・・・」
握りしめていた手のひらがジットリ汗ばんでいる。

そいつを私が討てるのか?

あまりにも強敵すぎる・・・
相手は徒党を組んで喧嘩争いを生業(なりわい)としているのだ。

『千代さま・・・その時は私が前面に出てお相手いたします
どうか・・・どうかお力をお貸しくださいませ』

もとよりこの体を朱里と共有すると決めたあの日より
命を懸けるのはいとわないと思っていた。
だが剣山殿を心底愛してしまった今となっては命が惜しい・・・

一日でも長く剣山殿と愛し合う日々を暮らしたい
そんな思いが強くなってしまった。

『私は決してあやつらには負けません。
お願いです、どうか私の無念を晴らさせてくださいませ』
乳房に内側からキュウっと掴まれた痛みが走った。

「わかりました・・・
朱理を信じます。あなたとどこまでも駆け巡ろうではありませんか」
千代は覚悟を決めた。
ダウンロード (15)


「忍びの者!!そこにいるんでしょ?」
千代は天井の片隅を睨みつけて叫んだ。


剣山殿は思いのほか細やかな神経のお方でございます、
千代様にも護衛の忍びの者をいつも天井に忍ばせております・・・
と朱理がこっそりと教えてくれていた。

「降りてきなさい!」

「いえ、拙者は影の者ゆえ、姿を現すことは憚(はばか)りまする・・・・」
自分は天井裏から私たちの愛の行為を盗み見してるくせに、
なんと都合のよいことを申すか・・・

「あなたは、私が一人でつぶやいているのが不思議で仕方ないでしょうね」

「いえ・・・そのようなことは・・・・」
まるで誰かと対話しているように喋っているのだから、気のふれた女だと思っているだろう。

「すべては後日に話します。今は見聞きしたことを誰にも言わないでおくれ・・・」

「御意・・・・」

「ところで、お前は鎖帷子(くさりかたびら)を用意できますか?」

「・・・・それは私たちが身につけている鎖帷子のことでございましょうか?」
どうしてそんなものがいるのかと怪訝に思っているのだろう
声に微かな動揺が感じられた。

「そうです・・・すべては先ほど申したように後日にすべてを話します故、
用意してくれませんか・・・」

「・・・・わかりました。
昼餉(ひるげ(昼食))までに用意して鬼食い番(毒見係)の兵吉に渡しておきましょう」

「無理を言ってすいませぬ・・・どうかよろしくお願いします」
山賊を討ちにいくまでに武器と防具を揃えておく必要があった。
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テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

21:33  |  蒼い月光(コラボ作品)  |  Trackback(0)  |  Comment(2)

2016.07.24 (Sun)

蒼い月光 39(原案 あすか)

剣山の剣先がまともに朱里の心の臓を貫いた。
己の心の臓が弾ける音を聞いた瞬間、朱里の意識が消えて闇が襲ってきた。

次の瞬間、天空より光が差し込み朱里の意識だけが体を離れて宙に浮き上がった。
宙に浮き、地上に横たわる己の骸を見下ろしていた。
腹の中の「ややこ」は人としてまだ形成されていなかったのだろう、
ややこの意識を感じ取ることはできなかった。

右手は肘から先を切り取られ、胸からおびただしい流血している骸・・・
だが剣山への恨みはなかった。
あの時、目に血しぶきが入らなかれば、今、地上に横たわっているのは剣山の骸であったはずだ。
勝負は時の運。
敗れたものは潔く負けを認めるのが武士(もののふ)の道というものなのだ。

このまま天に昇ろう・・・
あたりを見回すと、幾重もの光の筋が天空に向かって伸びていた。
うつろな眼の武士たちが惜しむように地上を見下ろしながら昇天していった。
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逝きかけた朱理を剣山の言葉が引き止めた。

「敵ながらアッパレであった。誰か、この女の右手をここへ・・・」
家臣の者が朱里の右手を差し出した。

「右手がないと不便であろう・・・」
朱里の胸に切り取られた右手を乗せ、剣山は両手を合わせて合掌した。

その合掌に合わせるかのように、はるか先より『貞虎、討ち取ったり~~』という勝鬨があがった。

「戦は終戦した~~~!!!!討たれた家来の骸は家族に渡してやれい!
身寄りのない家来の骸は丁重に弔ってやれい!!
敵方の武士(もののふ)もまた然り!敗れた隣国も今から儂(わし)の領土なのだ
隣国に使いを出し、骸を引き取るように伝えよ!
身寄りのない骸は我が家来と同様に丁重に弔え!!!」

そう命じた後、朱里の骸の傍にひざまづき
「お前も父母の元に帰りたいであろう・・・
しばし待たれよ必ずや家に帰らせてやるからな」と言葉をかけた

伝令は首領を通じて朱里の育ての親である疾風とウズメに伝えられた。



「そうか・・・朱里が逝ったか・・・」
疾風は天空をジッと見つめ、溢れそうになる涙を堪えた。
ウズメはその場に泣き崩れ、己の呪われた人生を悔やんだ。
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剣山は死者を丁重に弔った。

若く、血気盛んな武将ではあったが、
それとは逆に先代の殿様の血を受け継ぐ情の深い熱き漢(おとこ)でもあった。

なかでも、己に挑みかかってきた、うら若き乙女の「くの一」には情を抱き、
骸を引き取りにきたウズメと疾風に娘の最期を語って聞かせ、アッパレな最期であったと讃えた。



「朱里は見事に散ったのね‥‥」
朱里が納められた棺の大八車を押しながらウズメは呟いた。

「あのような立派な武将に敗れたのだから、朱里も本望であろう‥‥」

朱里の骸は銀箔の棺に納められた。

ウズメと疾風は少しでも早く村に帰り着き、
朱里の亡骸を思い出の残る我が家で寝かせてあげようと、
少し険しいが近道となる喧騒峠(けんそうとうげ)の道を選んだ。

だが、その親心が災いした。
その峠こそが貞虎が朱里に話していた山賊が住み着いていた峠だったのだった。

キラキラと輝く銀箔の棺は、山賊の目にはお宝の詰め込まれた長持ちとして映った。

山賊は、気配を消して少しずつウズメたちに近づいた。
若い頃の二人ならば、いくら気配を消そうが、わずかな空気の流れと
血生臭い匂いを嗅ぎ取ったに違いなかったが、
現役を退いて十数年の二人の嗅覚は鈍っていた。

「朱里‥‥今夜は、お前が好きだった草餅を作って枕元に供えてあげるからね」

「あの家は、お前が暮らしていたころのままだよ‥‥
懐かしいだろ?一刻も早く連れ帰ってあげるからな」

夫婦は、代わる代わる棺の中の亡骸に話しかけた。
もはや朱里は返答もしない冷たい骸であったが、
夫妻は朱里がただ眠っているだけなのだと思いたくて、絶えることなくしゃべり続けた。

あまりの峠の険しさに、少し休もうかと歩みを止めたその時、何本もの矢が二人を襲った。
「はっ!?」
二人は瞬間的に身をかわし、地面に転がった。

『悪いことは云わぬ!その財宝を納めた箱を置いて立ち去れい!!』
木々の枝葉がビリビリと震えるようなドスの利いた低い声が二人に投げかけられた。

「いえ、これは娘の亡骸を納めた棺でございます。
儂(わし)らは、名も無き貧しい百姓でございます、どうか見過ごし下さいませ」
手裏剣と忍び刀さえあれば、こんな山賊に負けない自信があった。
だが、生憎の丸腰だったのでどうにか穏便に事を済まそうとした。

『ふふふ・・・おもしろい。命が惜しくないとみえる』
ガサガサガサと草木を掻き分けて山賊軍団が姿を現した。
敵の人数は9名
髪をボサボサに伸ばし、背丈は7尺(約2m)、体重は40貫(約150kg)ほどの
大男たちがウズメたちに近づいてきた。
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「さあ!わしらが恐ろしければ、荷物を捨ててさっさと立ち去れい!!!」
まるで雷鳴のような大声が二人を襲った。

『わしは右側の5人を・・・』

『私は左側の4人を・・・』

目で確かめ合ったウズメと疾風は、覚悟を決めたように肯いた。

次の瞬間、二人は隼のように上空へ舞い上がった。

二人は大男たちの頭上を軽々と飛び越えて
いとも容易く奴らの背後に回った。

ウズメは手始めに仲間の中でも一番下っ端の風格の男の膝裏に蹴りを入れた。
ふいをつかれた男はバランスを失い腰が砕けたように地面に転倒した。
起き上がろうと両手を地面についた隙をウズメは見逃さなかった。

素早く男に近寄り、長差しをスルリと抜き取った。

「ほえ~?」
あまりの早技に男は呆然とした。

「あ?俺の太刀だぞ!返せ‥‥」
次の瞬間、飛びかかろうとした男の首がハネられ上空に舞った。
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