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2021.05.25 (Tue)

貴方に抱かれて私は蝶になる 12

咲桜(さくら)さんが抜けたといっても
それなりのご依頼の電話はかかってきました。

今夜はどんなお客さまが指名してくれるのかしらと
女の子たちはそれぞれスマホゲームに夢中になりながら
指名を待っていました。
そんな折り、一本の電話が私たちを凍りつかせました。
所轄の警察から連絡があって、話を伺いに来ると言うのです。

「なんでも過去にうちを利用してくれたお客さまの事で
いろいろ話を聞きたいそうだ。
いいか。お前たちは本番なんかしていない。
そうだよな?俺はお前たちに本番を強制していなかったよな?
お前たちも本番はしていないよな?」
そう言いながら所長はヤバそうな書類関係を必死にシュレッダーしていました。
ほどなくして警察から二人の刑事が訪ねてきました。
「申し訳ありませんが…こちらを利用されていた吉井武人さんの事で少しお話を伺いたいんです」
摘発か何かだと思っていた所長は安堵の表情を浮かべ、
「おいリリー!吉井さんはお前のお客さまだったよな?」と
リリーさんを事務所の片隅に置いてある応接セットに来るように手招きしました。

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「えっと…リリーさん?もちろん源氏名ですよね?
本名をお聞かせください」
刑事が手帳を広げてメモの準備をしながら
リリーさんをジロジロと見つめました。
「はい…木村です。木村和美と言います」
本名を私たちに聞かれたくないのか
リリーさんはとても小さな声でそう言いました。
「では、木村さん、
吉井武人さんについて知っていることをお聞かせください」
内緒にしておきたい本名なのに
刑事は部屋に響きわたるような大きな声で
「木村さん」と呼んだ。
「知っているもなにも、吉井さんは月に一度だけ
私を指名してくれて他愛ない世間話をするだけの関係でしたし…
あの…吉井さんに何か?」
そのようにリリーさんが反対に刑事さんに尋ねると
一呼吸おいて、二人組の刑事のうち若い刑事が
「吉井さんは自殺を図り命を落としました」
と、ほんとに事務的な口調でそう言いました。
純恋(すみれ)たちが驚いたぐらいですから
指名されて懇意にしてもらっていたリリーさんの驚きは
半端ではありませんでした。
人間あれほど体が震えるのかというほど
ブルブルと痙攣し始めたんです。
そして「わあーっ」と叫ぶと泣き崩れてしまいました。
「帰ってください!貴方たちに血が通ってないんですか?
後日、リリーさんが落ち着いた頃に来てください!」
リリーさんがお気に入りの稲本さんが血相を変えて
訴えました。
「わかりました。出直しましょう」
そう言って二人の刑事は帰って行きました。

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稲本さんはリリーさんの肩を抱いて
「大丈夫、あなたのせいではありません
私がついてます、気を確かにお持ちなさい」
と介抱していました。
「リリーはこの後、仕事にならんだろう。
稲本、リリーを家まで送ってやれ」
所長はそう言って落ち着くまで休んでいいぞと
慰めていました。

車の助手席に座らせてもリリーさんは泣き止みません。
「家まで送り届けますから住所を言ってください」
カーナビを操作しながら稲本さんは尋ねました。
でもイヤイヤと頭を振るばかりでらちが明きません。
「弱ったなあ…」
車を走らせながら稲本さんは困り果てました。
「落ち着いた場所で少し横になられた方がいいですよ」
稲本さんは車をラブホの駐車場に車を滑り込ませました。

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テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

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