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2021.05.28 (Fri)

貴方に抱かれて私は蝶になる 15

「あれっ?こんなところにお弁当屋さんが出来たんだ…」
坂口勇樹は歩みを止めて、しばし躊躇した。
コンビニ弁当も飽きたし、たまにはホカ弁でもいいか…
坂口は踵を返すと店内に入っていった。

「いらっしゃいませ」
可愛い女性の声が店内に響く。
『へえ~、こういう店は大概がおばちゃんなのに
ちゃんと女の子を雇っているんだ…』
坂口は女性の顔を見ずに、ひたすらメニューと格闘していた。
格闘の末、出した答えが『のり弁』だった。
「すいません、のり弁を一つ」
注文を入れながら初めて女性の顔を見て
坂口は「あっ!」と声をあげた。
キョトンとしている女性店員に向かって
「純恋(すみれ)さんですよね?」と声をかけた。

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純恋(すみれ)こと、大空恵美(めぐみ)は
懐かしい名を呼んでもらって
ドキッとした。
「あの…どちら様でしょうか?」
恐る恐る尋ねてみた。
「坂口です。一度だけ貴女のお世話になった者です
あの時は寝入ってしまって、
貴女をお見送り出来なくてすいませんでした」
坂口は丁寧に頭を下げて当時の非礼を詫びた。
「え、えっと…ごめんなさい
覚えていないんです」
恵美(めぐみ)は深々と頭を下げた。
「俺、風貌が変わっちゃったからなあ
じゃあ、こうすれば思い出してくれるかな?」
坂口は帽子を取って手で髪の毛をくしゃくしゃにした。
「ほら、このボサボサの髪に無精髭の面を想像してくださいよ」
恵美は数多くのお客さまの顔の記憶を辿った。
そして今度は恵美が「あーっ!」と大きな声をあげた。
汚いマンションの一室で、
洗ってもいない包茎ちんぽを咥えさせた男…
そういえば坂口という名前で予約してきたわねと
恵美は明確に思い出した。
「あの時は本当に失礼しました
お詫びに夕食でもご一緒しませんか?
仕事は何時に終わります?お迎えにきますよ」
坂口に一方的にデートを申し込まれ、
恵美は断るタイミングを逃してしまい
デートを受ける事にした。

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夜8時ちょうどに坂口は迎えに来た。
連れ立って歩くと、
過去に一度だけ訪問した
例のマンションに向かっていることに気づいた。
「あの…夕食はご自宅で?」
ええ、そうです。デリバリーを頼んでます。
家の方が落ち着くかなと思って…
坂口は軽くそう言うが、
恵美は例の汚い部屋を思い出し、
一気に食欲がなくなった。
しかし、予想に反して
部屋は綺麗に整理整頓され、
掃除も行き届いていた。
「雰囲気…変わりましたね」
恵美がそう言うと
「貴女に仕事を頼んだときが
僕の最悪な時代でしたし…」
話を聞けば、
坂口はコンピューターのプログラマーだそうで
仕事に行き詰まってむしゃくしゃしていて
鬱憤ばらしにデリヘルを頼んだということだった。
「さあ、こっちのテーブルへどうぞ」
招かれたテーブルには見事なフランス料理が並べられていた。
「デリバリーと言っても捨てたもんじゃないでしょ」
皿のロゴマークを見て恵美は驚いた。
なんと一流レストランのロゴマークだったからだ。

食事が進みワインも頂くとお互いにうち解け合い
近況を話し始めた。
「ところで…あのデリヘルのお店…
失くなっちゃったんですね
久しぶりに貴女のお世話になろうと電話したら
繋がりませんでした」
そうなんです。
恵美はお店が潰れた経緯を話し始めました。

かなり繁盛したお店だったんですけど、
まず、売れっ子の咲桜さんが離脱したのが大きかったんです。
彼女、SM嗜好のお客さまに飼い慣らされてしまって…
趣味と実益を兼ねたSMクラブに行ってしまったんです。
それだけではありません。
リリーさんという地味な30代の方がいたんですが、
彼女のご贔屓さんが自殺しちゃいまして…
病気の悪化と金銭面での生活苦が原因なんですけど
事務所の方に警察の方が来られましてね…
ほら、こういったお仕事は警察が来ると、
なにか悪いことをしていたんだろうって
噂になっちゃって、
あっという間に閑古鳥が鳴き始めてね。
おまけにリリーさんと
女の子を送迎する稲本さんという方が
駆け落ちしてどこかへ行っちゃうし…
女の子が一人抜け、二人抜けしちゃうと
次々とよその事務所に移ってしまって
ついには閉鎖しなくてはならなくなって。

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一気に話してしまうと堪えきれなくなって
恵美はポロポロと涙を溢しました。
「貴女は他のお店に行って、
またデリヘルをしようとは思わないの?」
「こういうお仕事は
常に需要と供給で成り立っているんです
私の年齢だと若くもないし熟女でもないから
あまりお仕事がないの…」
坂口はなんと言っていいかわからず
恵美の隣に座って肩を抱いた。
坂口は、あの夜からずっと恵美を追い求めてきた。
それが恋心なのか、惚れているという事なのか
女性経験に乏しい坂口には見当もつかなかった。
ただ、恵美と一緒にいたいという気持ちだけは本音だった。
「純恋(すみれ)さん、あ、いや恵美さん、君さえ良ければ
俺と一緒に暮らさないか?」
そう言って坂口は恵美にキスをした。
「私、貴方が思うほどいい女じゃないわよ」
そんなことはないさと
坂口は恵美を抱き抱(かか)えてベッドに連れていった。

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。。。。。。。。。

「貴方に抱かれて私は蝶になる」いかがでしたか?
三者三様のデリヘル嬢をヒロインとして
それぞれのお客さま相手の人生を描いてみました。
まったくノーマルで人並みの美貌だけれど
少しグレていてやんちゃな顔を持つ純恋(すみれ)。
三十路で派手さがなく、あまり指名がないけれど
人情に厚くて世話好き女房はのリリー
超売れっ子で抜群の美貌とスタイルを誇り
プライドの高い咲桜(さくら)
三人ともデリヘル嬢を卒業してそれぞれの道を歩み始めます。

どこかのデルヘルで彼女たちのような女性に出会っても
決してプライベートな事は聞かずに
彼女たちが与えてくれる快楽をご堪能してくださいね

テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

05:59  |  貴方に抱かれて私は蝶になる  |  Trackback(0)  |  Comment(4)
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