2017.10.03 (Tue)
JOY(濡れる女医) 14
セミナー室の片隅で奈美はボールペンを指先でクルクルと回し考え事をしていた。
壇上では海外から招かねた著名なドクターが膝関節の新しい術式の説明をしている。
大事なセミナーだというのにまったく心此処にあらずであった。
整形外科学会に出席するために3日間の休診を余儀なくされた。
帰ってきたら一緒に遊びましょうねと真由子に耳元で囁いたのだが「あ、はい…」と気乗りしない返答だったのが気になって仕方なかった。
ドクターとナースではシフトが違うため、お互いに思うような時間が取れず、せっかく真由子にロストバージンしてもらったにもかかわらずベッドを共に出来ずにいた。
『わたし、フラれちゃったのかな…』
レズにはさほど興味のない奈美であったが独占欲が強く、真由子を自分のモノにしたいと思っていた。
レズにはさほど興味のない奈美であったが独占欲が強く、真由子を自分のモノにしたいと思っていた。
「ここ、空いてますか?」
講義が一段落して休憩時間になったときに奈美は声を掛けられた。
「あ、はい。空いてます。どうぞ…」
奈美は慌ててテーブルに散らかしていた資料を自分のスペースにまとめた。
男は隣の席に「よいしょ」と着席しながら久しぶりだねと話しかけてきた。
「?」
誰だったかしら?と記憶を辿っていると
「おいおい、君の最初の男の顔を忘れちまったのかい。前川だよ、前川光太郎」と記憶を呼び覚まされた。
誰だったかしら?と記憶を辿っていると
「おいおい、君の最初の男の顔を忘れちまったのかい。前川だよ、前川光太郎」と記憶を呼び覚まされた。
そうだった!
同じ大学で目立たない存在だったヤツだ。
同じ大学で目立たない存在だったヤツだ。
国家試験に合格したあの日、みんなと祝杯をあげ、酔いつぶれた奈美をお持ち帰りしてバージンを食い逃げした男だ。
「その節はどうも…」
どう挨拶していいかもわからず奈美は当たり障りのない言葉を投げた。
初体験の相手なのだから喜色満面で再会を喜んでくれるとでも思ったのか「つれない返事だなあ」
なれなれしく会話を続けようとした。
なれなれしく会話を続けようとした。
バージンを奪っておきながら連絡先はおろか、ちゃんとお付き合いをしたいとかのアクションさえなく奈美の前から消えた男…
こんな男の傍にいたくないと荷物をまとめて席を移ろうとした。
だが光太郎は奈美の腕をすかさず掴んで離さなかった。
「やめてください。大声を出しますよ」
「まあそんなに怒るなよ。あの時の事は謝るよ、本当に申し訳なかった…」
光太郎はそう言って頭を下げた。
「こんなところでよしてください!」
奈美は慌てて男に頭を上げさせた。
奈美は慌てて男に頭を上げさせた。
「君とちゃんと話をしたかったんだ。セミナーが終わったら連絡をくれないか?」
男は携帯電話の番号をメモすると奈美に受け取らせた。
「待ってるから…」
そう言い残し光太郎は席を立った。
そう言い残し光太郎は席を立った。
その夜、奈美はホテルの部屋で番号が書かれたメモを見つめながら悩んでいた。
『今さら会ったところでどうしようと言うのよ…』
そう思ったがバージンを奪った代償に今夜の食事ぐらい奢らせてやろうと奈美は電話を掛けた。
電話をかけると待ってましたとばかりにすぐに応対にでた。
「良かった。無視されるのかと思っていたよ」
電話の声はウキウキとしていた。
あなたの奢りで食事をごちそうして頂戴。そう伝えると、喜んでご馳走させてもらうよと返事がかえってきた。
奈美が選んだのは宿泊先からさほど遠くない高級フレンチ店だった。
値段に違わぬ料理は美味しくてワインも最高だった。
そんな些細な幸福感で気づけば光太郎と親しげに会話も進んだ。
さて、会話はあの一夜の話題となった。
「ねえ、何故あの夜私を選んだの?」
「最初から君を狙ってたのさ。遊び慣れてる子よりもあの中でダントツに君が可愛かった」
「かと言って酔いつぶれた私を抱くなんて卑怯よ」
「でも君が…」
光太郎が言うには本当にちゃんとタクシーで部屋まで送り届けるつもりだったそうだ。
だがタクシーの中で抱きついて甘えてきた奈美に、きっとこれは誘っているのだと勘違いしたそうだ。
「私から?」
「うん。言い訳になっちゃうけど、部屋に帰りたくないと言い出して…」
そう言われれば男としては、てっきりホテルでお泊まりを催促してるのだと思ったのだそうだ。
「そっか…私からか…」
あり得る話だとおもった。
あり得る話だとおもった。
20代半ばで周りの友人たちは初体験をとうに済まし、自分だけが置いてけぼりにされた疎外感を感じてたのも事実だ。
酒の勢いで誰でもいいから女にして欲しいと思っていたかもしれない。
「でも、翌朝目覚めたらベッドに私一人だったのはどうしてよ」
「何度も君を起こしたけど全然起きてくれなくて…僕、あの日に田舎へ帰らなくては行けなくて飛行機のチケットを取ってあったんだよ。時間ギリギリまで君が目覚めてくれるのを待ってたんだけどね…だから枕元に置き手紙をさせてもらって先に部屋を出たんだよ」
『置き手紙を?』
あの日、ロストバージンで気が動転していて枕元になど目が届かなかった…
あの日、ロストバージンで気が動転していて枕元になど目が届かなかった…
どうせなら脱ぎ捨てた下着の上にでも置いててくれれば…
霧が晴れるように男に対するわだかまりは消えた。
「ねえ、お願いがあるの」
「何なりと」
「私、酔っていたからあなたがどんなSEXをしてくれたのか覚えていないの…できればもう一度ちゃんとあなたを知りたいの…」
数時間後、二人はホテルの一室で一糸まとわぬ姿で抱き合っていた。
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