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2016.03.20 (Sun)

黒い瞳 16

「もうすぐよ。がんばって!」
産婦人科医が声をかける。

「ああーっ!くうーっ!!」
淳子は歯を食いしばり、力を振り絞った。

ズルッとした衝撃とともに・・・
「おぎゃああ・・おぎゃあああ!!」
けたたましい産声が分娩室に響いた。

「おめでとう!かわいい女の子よ!」
女医が、へその緒を切り、
きれいに体を拭った我が子を胸元に抱かせてくれた。

「始めまして、由紀子・・・私がママよ。」
我が子をいとしく見つめながら心の中で健太に報告する。

『健太・・・残念でした。女の子よ』
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一方、犯行現場ではSATが犯人を取り押さえ、
事件は一気に終息した。

『俺は撃たれたのか?』
何人もの足音が聞こえる。

「被疑者!確保!!・・・人質無事救出!!」
捜査員の声がする。
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『よかった。人質は無事のようだ・・・』

「1名負傷!!!タンカ!タンカ!早くしろ!!早く!!」

『俺のことか?やはり俺は撃たれたのか?』
体が急に冷たくなる。

『寒い・・・』
何人もの手が若林の体に伸びる。
ベルトを緩められ、すばやくタンカに乗せられる。

『寒い・・・俺は・・・俺は・・・死ぬのか・・・?』
体の感覚が無くなる。

『淳子・・・どこだ・・・淳子・・・会いたい・・・

淳子・・・そしてまだ見ぬ我が子・・・

ゴメン・・・俺・・・・先に逝くわ・・・・』

健太は深い闇に包まれた・・・・
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淳子は隣の小さなベッドで、
すやすやと眠っている由紀子を
飽きることなく愛しそうな眼差しでみつめていた。

母も私を産んだときに、
こうしてみつめてくれていたのかしら。
そう思うとなんだか心が温かくなった。

『早く健太来ないかしら・・・
女の子と知ったそのときの顔が見ものだわ。うふふ・・』
健太には署の方へ義母が連絡してくれているはず・・・
まだ来ないところをみると、事件の解決が遅れているのかもしれない。

そう思う反面、なんだか胸騒ぎがする・・
由紀子を産み落とした瞬間、
『淳子・・・ゴメン・・』という健太の声が聞こえた気がしたからだ。

出産の一報を聞き、駆けつけてくれた義父の顔色も悪かった。
『おめでとう・・かわいい孫を産んでくれて本当にありがとう・・
健太も喜んでいるはずだ・・・』
そういって涙ぐんだ義父。

あの涙は歓喜のあまり流した涙ではなかった気がする。
まるで悲しみの涙・・・

「ばかね淳子、なに変なこと考えてるの」
声に出し自分で自分の胸騒ぎを打ち消してみた。

テーマ : 18禁・官能小説 - ジャンル : アダルト

16:27  |  黒い瞳  |  Trackback(0)  |  Comment(2)
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